留学官僚の退職理由は
元通商産業省(現在の経済産業省)職員で、現在民主党参議院議員の藤末健三氏は、留学後の退職について、同氏公式ウェブサイトで次のように指摘している。
「問題は、留学した役人が辞めることでなく、役所が『目的もなく留学させ、帰国後も留学で得た能力を使いこなせないこと』にある」(官僚の海外留学[2005年06月21日]より)
留学後の早期退職より、むしろ人材育成や適材適所にも問題があるのではないか、ということだ。藤末氏は、せっかく留学で知識を得たとしても、帰国後はその知識を行かせる部署への配属が必ずしも行われるわけではないことが退職理由の一つになっているのでは?と指摘する。
さらに同氏は、次のように提案している。
「役所が、きちんと『国際舞台で活躍する人材を育て、活用する』ようになれば、役所を辞める留学帰りも減りますし、なによりも『大きく国益に貢献できる』と考えます。今こそ、きちんと国際交渉ができる役人を育成すべきです。」(官僚の海外留学[2005年06月21日]より)
確かに今の日本は、国際交渉力の弱さが際立って目立ち、他国の主張ばかりを押し付けられていると感じることが少なくない。
教育投資は回収せよ
官僚の早期退職による留学費用返還義務化の法案化は賛成だ。しかし藤末氏が指摘するように「なぜ留学した者がすぐ辞めてしまうのか?」という問題に関する議論がもっと必要なのではないだろうか?
返還義務を法で拘束することにより、早期退職者は減るだろう。しかし問題の本質は、人材育成戦略にあるように感じられる。留学者選抜はもちろん、留学目的の具体化と留学成果の測定、さらに帰任者が働き続けたいと思うような環境の整備が必要だ。
学んだ知識を何らかの形で生かしたいと考えるのは、自然なことだ。また知識や技術は使わなければすぐに陳腐化してしまう。留学は費用を出す側からすれば投資である。教育投資はすぐに回収できるものもあれば、一定の期間が必要な場合もあるが、いずれにせよ、投資を効果的に回収するための制度やシステム作りが重要であり、これは常に見直されなければならない。
この留学費用返還義務を法制化することは評価できるが、これをきっかけに、各省庁における人材育成戦略がさらに重要視され、留学した国家公務員の得た知識や経験が、国のために活かされることを望みたい。
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