高年齢者に刺激されて、若い学生もモチベーションアップ
若者や同世代への影響力も社会貢献の一つだ |
前編では、年齢制限は仕方がない、という意見を中心に紹介したが、後編では、年齢制限反対派の意見を紹介しながら学びと年齢の理想的な関係について考えていきたい。
水鏡さん(40代男性)
「年齢制限賛成派の論拠は『税金投入に対する社会貢献(リターン)が少ない』に集約されると思います。しかし、社会人入試の入学者の勉学意識に刺激されて、一般学生の勉学態度が向上したという話も良く聞きます。この副次的な『教育』効果の検証無しに『リターン』の判断は出来ないのではないでしょうか。医学教育に話を絞ると、学生、研修医の都市志向・高収入診療科への集中が顕著になり、その影響で医療過疎・小児科医等の不足、医師の質の低下が実際に問題視されています。これも税金を使った教育の『リターン』として甘受すべきなのでしょうか?」(以下略)
この意見で指摘している副次的な教育効果に注目したい。2005年から一般編入学制度を導入、それまであった「40歳未満」という年齢制限を撤廃し門戸を広げた東海大学医学部では、社会人経験者の目的意識の高さや勉強熱心さは、確実に若い人へ良い影響を与えているという。また、以前取材した明治大学の10代の学生は、「社会人学生と一緒に学ぶことで、クラス全体が活発になった。勉強になることがたくさんある。」と答えていた。
短期間であっても質の高い医師の存在こそ社会のために役立つ
ソフイーさん(40代女性)
「どこの大学にしろ、年齢制限で門前払いはそもそも大学創立の意味からしておかしい。大学は、学問探求の場ではなかったのですか?医学の勉強がしたい。しかも、優秀な人材が金目当ての医師養成機関の犠牲になっているような気がします。若くて心がけの悪い医者にこの先長く、長く見てもらってなき寝入りの患者を多く作るよりは、誇り高くしっかり勉強した医者にたとえ数年でも居てもらった方が社会の為には良いと思う。」
医師になってからの社会貢献できる年数について考えてみよう。確かに長期にわたり医師として活躍し、社会に貢献してもらう、という考えも理解できる。しかし期間が長ければよいと言うものでもない。この意見のように、質の高い医師が、例え短い期間であっても存在することに意味を見出す人は多いはずだ。豊かな人生経験を持ち、しかも50代になってから医師を目指し猛勉強の末医師になったという経歴の持ち主が、若い医師とは違った形で社会貢献できる分野は大いにあるだろう。特にその経歴そのものに勇気付けられる人は多いと思う。
高齢の学生を受け入れている医学部もある。1993年に、当時55歳の女性が秋田大学医学部に合格した例(卒業後、医師国家試験に合格、現在は内科医として勤務)や、2003年には前年に熊本大学医学部を卒業した66歳の男性が医師国家試験に合格した例などがある。
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