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日本の外交、やっぱり「三流」?(3ページ目)

「経済一流、外交三流」といわれる日本の外交。たしかにそのせいか、日本の国際的発言権はなんだか弱い気がします。なぜ、日本の外交力は弱いのでしょうか。具体的エピソードなどをもとに検証します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「戦略の欠如」これは日本の国民性なのか?】
2ページ目 【情報収集能力で大きく劣る日本の外交当局と指導者たち】
3ページ目 【「使えない軍事力」……日本外交、弱腰の原点?】

【「使えない軍事力」……日本外交、弱腰の原点?】

軍事力はいまでも「国家の体力」

日本に「軍事力」があれば外交の力も変わる、と大学の先生に言われたことがあります。当時は反発していましたが、今になってみればよくわかります。

国際社会を支配するのは、究極のところ軍事力です。国際社会はいまだ「万人の万人に対する闘争」(17世紀の思想家ホッブズの言葉)とは、国際関係論の教科書に良く出てくる言葉です。

悲しいことですが、現実は受け止めなければなりません。国際社会は、いまでもまだ、軍事力がものをいう社会なのです。そうでないなら、世界2位のGDPを誇る日本はもっと発言力が強くて当然なはずです。

軍事力は量より質

戦車
日本の「軍事力」はお金がかかっていても、あまり使えない?(photo(c)りん工房
こんなことをいうと、「日本は毎年何兆円という事実上の軍事費を支出しているではないか」と人もいるでしょう。

しかし、軍事力は金額うんぬんで決まるものではありません。質です。それを高めようとしているのがアメリカのRMA(軍事における革命)です。

アメリカは費用対効果が高く、安上がりで強力な軍隊を作ろうと国力を上げて取り組んできました。その成果がイラク戦争での勝利でした。むかしなら奇襲といわれてもいいようなスピード作戦を、アメリカ軍はルーティンの作戦のように行い、成功させました。

(もっとも、それがテロには効果がないことも実証されましたが)

だからといって、アメリカのRMAをそっくりそのまままねる必要はないのです。日本はアメリカのように敵国に上陸して攻めるということはしないからです。

求められるのは専守防衛とアメリカの後方支援です(後方支援の是非は別として)。その方向性に沿って、日本の自衛力の質を高めることが必要とされることになるでしょう。

使えない日本の「軍事力」

ところが、日本の自衛隊は装備だけよくても、実際に役にたつのか、疑問なところが多いのです。

自衛隊の主力戦車「90式」は、北海道にはたくさんありますが北陸にはありません。拉致事件がおこったのはこの辺りです。ここが攻められる可能性があるのに、ないのです。

では鉄道や新幹線のレールに積めるか(ソ連はシベリア鉄道を使ってがんがん戦車を送り込んだものですが)というと、積めない。大きすぎるのです。どうやって関東から北陸にいくのか。高速道路は90式が走れるよう設計されているらしいのですが、お盆とかで大渋滞の中だったら、どうするのか。

それに、そんな大きなものが、せまい日本の道、細かな地形をすっと移動できるのか。

私が今年1月、テレビでみたのはアメリカ・カリフォルニアで重装備のまま泳ぐ自衛隊員の練習風景でした。このような練習はこれがはじめてとのこと。みんなバテバテでした。テロリストがいきなり瀬戸内海の小島を占拠した、こんなとき、このような自衛隊は役に立つのでしょうか。

(このようなことをやりはじめたのは、アメリカ軍の移転を見越してのことです。日本国防のアメリカへの依存度ぶりがみてとれます)

軍事力で足下を見られている日本

このような状態は、当然周辺諸国は知っています。中国もそうです。それでも中国指導部は「日本の侵略の懸念」などと非難します。知ってて言っているわけです。

こんな情勢の中、日本の自衛力は専守防衛にも足らないものしか持ち得ないのです。インド洋で給油したり、サマワでじっとしているのは得意ですが。困った話です。

だから、中国は平気で協議もなしにいきなり東シナ海の問題がある地域でガス田開発などを始められる。日本が何もできないことを知っているからです。中国のガス田採掘施設ができて、ようやく協議です。日本の軍事力がそれ相応なら、こんなことにはなっていないでしょう。

国家予算の何十%も軍事費に使うようなことは必要ないのです。現状の費用で、知恵を働かせて日本の実情にあったRMAを作り、質を高めればいいのです。しかし、それはようやく緒についたところです。

「現実逃避」してきた日本の「場当たり的外交」

外務省
もう日本外交に「現実逃避」は許されない
日本の外交力がなぜ3流なのか、結論はこういうことになるでしょう。「現実を直視していないから」。戦略の立案、情報収集、軍事力の質の強化ということから目を背け、その場しのぎの対応ばかりをしているのです。

そして、このようなことは、他の外交指導者にはよくわかっているということです。だから、時には見くびられることがあるのです。

最終的には人です。ヒューマン・パワーです。こういうことを指導できる人材が必要でしょう。首相が5年間任期を勤めることはまことに結構だと思いますが、外務大臣などもそうであってほしいと思ってしまいます。

今回の記事「日本の外交はやっぱり『3流』?」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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