ウクライナを通らないとヨーロッパに行けないガス

東欧の地図
東欧地域のセルビア、ハンガリー、ブルガリア、スロバキアなどは、天然ガスの供給停止で大きな被害を受けた。
ロシアとウクライナの揉め事なのにヨーロッパが影響を受ける理由は、ロシアからヨーロッパに送られる天然ガスが、ウクライナのパイプライン経由で送られているからです。そのために、ウクライナがヨーロッパへ供給されるガスを「抜き取り」することも可能になっています。

2006年の供給停止の時は、ロシアはウクライナへの供給分だけを停止し、ヨーロッパへの供給は減らしていませんでした。しかしヨーロッパには約束の供給量が届かず、EU諸国はロシアに「どうなっているんだ?!」と詰め寄りました。そこでロシアの言い分は、「自分たちはきちんと送っている。ウクライナが抜き取りをしているんだ」と主張し、ウクライナは「そんなことはしていない」と主張していました。

2009年の紛争ではロシアがヨーロッパ向けの供給を停止してしまったため、ヨーロッパの市民生活や企業にかなり影響が出ました。特に東欧で被害が大きく、セルビアでは17万世帯、ブルガリアでは65,000世帯でガス暖房が止まった他、学校や病院もガス不足のため一時閉鎖した施設が出ています。ハンガリーやスロバキアでは家庭に優先してガスを供給したため、工場で使えるガスが不足し、工場の操業停止などが相次ぎました。

背景にはウクライナの政治対立

今回や2006年のようなガス紛争が起こる背景に、ウクライナ国内の政治的問題があります。ウクライナでは2004年に「オレンジ革命」が起こり、ヨーロッパ寄りのユシチェンコ大統領が誕生しました。一方でウクライナ国内には、ロシア寄りの勢力が多く存在しています。

そういったロシア寄りの勢力や自党の支持者に自分のスタンスを見せ付けるためにも、ユシチェンコ政権はロシアの価格引き上げの提案を「はい、わかりました」といって簡単に飲むわけにはいかないのが現状です。そのために、今回や2006年のようなガス供給停止にまで発展する大きな問題にエスカレートしてしまいました。

今回は幸いにも、1月18日に1000立方メートルあたり360ドルの価格でロシア・ウクライナ両者が合意し、ガスの供給は20日に再開されています。しかし天然ガス価格は常に変動するものであり、またウクライナ国内の政治的問題も残る以上、同じ紛争が将来的にまた起こることも考えられるでしょう。

参考サイト

産経新聞(2008/12/25)
共同通信(2009/1/9)
産経新聞(2009/1/20)

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