社会ニュース/よくわかる政治

なぜ年金制度はややこしいのか(2ページ目)

未納議員たちは口々に言います。「今の制度はややこしい。」たしかにそうです。なぜそうなったのか、表の事情、裏の事情を交えて解説します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【年金制度のややこしさ】
2ページ目 【年金を一つにすればすっきり】
3ページ目 【年金制度をすっきりできない裏の理由】

【年金を一つにすればすっきり】
がんばればできるはずの「年金制度一元化」


こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語

国民年金を全員加入にして、国民年金財政を安定させようとした官僚のもくろみは、ある程度あたったわけですが、そんな官僚のやっていたことなどお構いなく、議員さんたちは「自分らは議員年金があるから国民年金は必要ない」とかってに思っていたのですね。

私の祖母なんかも、まあとっくに年金受給者になっているわけですが、国民年金と厚生年金、まったく別の2本立てになっているものとこの間まで思っていましたから。サラリーマンの給与明細には厚生年金は差し引かれているけれども国民年金は差し引かれているとは書いていません。国会議員の年金未納問題が出るまで、厚生年金払っている人は国民年金払ってないと思っていた人も少なくないのではないでしょうか。

というわけで、「2階建て」にしてすっきりさせたつもりがあまりややこしさがかわっていなかった年金制度。そこで急浮上してきたのが、「年金を一元化しよう」という案です。つまり厚生年金やら国民年金やら区別するのをやめて、全国民同じ年金で統一しよう、という案です。

これ、「年金制度は複雑だから未納してしまった。一元化されていたら未納してなかった。」なんていう未納議員の言い訳にも使われそうでいやなのですが、しかし実現すればすっきりする制度です。

スウェーデンの年金制度は一元化されています。国民は全員定額の基礎年金に加え、それぞれの所得に比例した付加年金を基礎年金に加えて支払っています。日本は厚生年金、共済組合はこれに似ていますが、国民年金が定額の基礎年金だけとなっており、年金制度が一元化していません。

そんなこんなで急きょ、5月11日、衆院本会議で政府案に「一元化を検討する」という修正条項がつけられ、年金法案は衆議院を通過しました。いきなり一元化が、現実の政治課題に浮上してきました。

しかし、一元化への道のりはけわしそうです。政府・自民党はこう主張します。「自営業者や自由業の人びとの所得を正確に把握することはたいへん難しい。確定申告のしくみから根本的に見直さないと、すべての国民に所得比例の年金を導入することはできない。」

たしかにそうです。よく、「クロヨン」「トーゴーサン」という言葉を耳にします。クロヨンとはサラリーマンは9割、自営業者は6割、農家は4割しか所得をきちんとつかめていない。トーゴーサンはさらに進んで、サラリーマン10割、自営業者5割、農家3割ということを示す言葉です。

しかし、逆に言うと所得をつかむ(「所得捕捉」)がうまくいけば、すべての国民が所得比例年金となり、年金制度を一つにすることができるわけです。厚生年金から国民年金への切り替え、とか、そんなことをいわなくてもすむようになるのです。

ところが、ところがなんです。

 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます