大きなリスクを背負う
オンライン取引に欠かせないのが、多くの取引を処理し、ユーザーに快適なサービスを提供するシステム。多額の投資が必要だが、楽天や松井証券などと出資の交渉を進めていたものの、そう簡単に決まるような話でもない。システム発注の期限が迫っていたとき、車田さんはシステム開発費を個人保証して発注に踏み切った。
同社のシステムのように24時間稼動し、多くの取引をこなす複雑なシステムともなれば、初期段階でも億単位の資金が必要と推測される。こうした大きなリスクテイクは、官僚時代にはもちろん経験しなかったことだ。しかし、リスクを取らねば何もできない。「取るべきリスクを取る」と発注を決断した。
そうして完成させたのが、業界最速を自負する取引システム。ユーザーのパソコンに専用ソフトをダウンロードさせるリッチクライアント方式を採用し、ブラウザ画面ですべての取引が完了するシステムに比べ、豊富な情報量と高速取引を実現させることに成功した。値動きが大きく、瞬時の取引が必要とされる商品取引には欠かせないという車田さんの判断だった。
こうした判断から有能だがリスクを取らないエリート官僚のイメージは感じられない。車田さんの場合、官僚から起業家へのキャリアチェンジはスムーズにできたといえよう。
10年先を考えろ
自らリスクを取り、官から民、官僚から起業家への転身を遂げた車田さん。今後のキャリアを考えている読者に、「目先ではなく少なくとも10年先、できれば一生を振り返ったとき、絶対に後悔をしないと思える判断をしてほしい」という。「本当にやりたいことを自分の胸に聞き、時間をかけても自問自答してください」
▼関連リンク
・参考「エリート官僚の決断」
・ハピネスを追求せよ 日本通信三田聖二氏