変わらぬ業界
▲「自分としては心血を注いだという思いがあったので、部署を離れた後も引き続き、業界の動きを見守っていました」 |
「自分としては心血を注いだという思いがあったので、部署を離れた後も引き続き、業界の動きを見守っていました」
ところが、業界はかつてのネガティブなイメージを引きずったままだった。オンライン取引の普及も思ったほどには進まなかった。制度を熟知しているだけに、商品取引のオンライン化に大きなビジネスチャンスがあると感じていたが、いまだに変わらぬ業界を見るにつけ、「自分でやってみるか」という思いが日増しに強くなってきた。
とはいえ責任あるポジションにいたため、おいそれとは動けない。もちろん、恵まれた環境を捨ててまでやるべき仕事か悩んだ面もあった。忙しい仕事を続けながら、自問自答の毎日を過ごす。
「仕事の大変さや報酬のことを考えたら、そのまま官僚として自分のキャリアを終えるほうが合理的と考える人も多かったかもしれません。だけど自分ならではの発想と行動力を生かした、世の中にとって意味のある改革にこだわりたい」
と、ついに自ら起業する道を選ぶ。
そうした考えを古くからの友人や知人に相談すると、次第に話は具体的になり、ビジネスプランも固まった。ついに20年務めた官庁を辞め、ドットコモディティを起業。そのとき車田さんは40歳を超えていた。やり直しの利く20代とは決断の重みが違う。