400ページを48時間で納品
▲『グーグルを超える日 オーケイウェブの挑戦』 |
兼元さんは「やれます」と回答。400ページを作るため、自分の過去の作品を引っ張り出し、それを参考にしながら猛スピードで仕上げ、何とか期限に間に合わせた。驚いたのはむしろクライアントのほうだった。間に合わないと思っていた期限に間に合い、しかもクオリティーもずば抜けて高い。クライアントは「いいね! いいね!」を連発して、兼元さんのデザインを気に入ってくれた。
「火事場の馬鹿力とはこのこと。『そちらは何人でやっているの?』と聞かれましたが、まさか1人でやっているとは思わなかったでしょうね(笑)」
内省の日々
仕事は忙しくなってきたが、それ以外の時間はすべて1人。考える時間だけはたくさんあった。その間兼元さんはどのような思いで過ごしていたのだろう。
「食事も満足に取れませんでしたから、今と比べるとものすごくやせていました。そういう生活を続けていると、まったく物欲というものがなくなり、純粋な気持ちになれました。Q&Aサイトの構想もその間、じっくりまとめていましたが、『こんな生活を続けていていいのか』というあせりもありました」
都会のど真ん中にいながら、修行僧のような内省の毎日を過ごしていた。満足に食事も取らない極限の状況にいたからこそ、本質が見えてきたのかもしれない。ホームレス生活を始めて約3年が経つと、兼元さんの心境にも変化が訪れる。
「Q&Aサイトの構想が固まってくると、妻子とやり直したいと思うようになったんです。やっぱり妻子と離れて暮らすのは、寂しいですよね(笑)」