初めて家を買われたときに、いつどんな火災保険に入ったかを覚えている人は少ないです。まして、どんな保険にはいりたいかを聞かれた契約者はほとんどいません。
次の買い換えでは、自分で考えて火災保険を選んで契約しましょう。日常のスーパーの買い物で10円100円の違いに目を光らせている賢い消費者の金銭感覚を忘れずに、家を賢く買い換えましょう。
みなさん、住宅ローンの銀行窓口でほぼ強制的に「長期割引住宅総合保険」に入らされています。中には、「長期の満期返戻金付き火災保険」を買わされた方までいます。
家を買う人が、十分な検討をしないで火災保険にはいる理由は、三つありそうです。
1.住宅ローンを借りるから、銀行の言うとおりにした方が良いのだろうと妥協している。
2.大きな買い物をするときなので、普段より10倍から100倍気が大きくなっている。
3.火災保険なんて、選択の余地のないものだと思っている。
それでは、長期の火災保険を売る側の人は、何を考えているのでしょうか?
住宅ローンの貸し手の銀行は、ローンの返済期間と同じ長さの長期火災保険を一括で買わせようとします。これは、誰のためでしょうか?
長期の火災保険を買わせる根拠はいくつかあります。
1.ローンの担保物件だから。
しかし、これはローン残高が土地の更地評価額を下回った時点(東京では経験的に10年経過した頃)では、土地の担保だけで足りているので、建物が焼失したとしても、銀行が何を要求する根拠もないはずです。
つまり、30年も35年もの長期の保険に入る必要はないのです。
2.自分の金融グループの売上に貢献し、自分もそのバックマージンの恩恵にあずかりたいから。
住宅ローンで囲い込んだエンドユーザーに食べられるだけ食べさせるという商人道。まさか、こんなことはないと思いますが。
3.家を買った人のため。
ならば、私は価額協定特約付きの5年間の火災保険を勧めます。
価額協定特約付き火災保険とは、再調達価額での評価額を協定し、再調達価額を基準として損害額をそのまま保険金として払う保険です。つまり、全焼したときには、建て換えをできる保険金を受け取れるようにする保険です。おまけに、全損となったときには、損害保険金の10%相当額が特別費用保険金として自動的に支払われるというスグレモノです。
5年超の火災保険には価額協定特約も付かないという保険会社が多いです。ということは、万が一家が燃えた時には、その時の時価評価額までしか保険金は下りませんから、家の建て換えには火災保険金では足りません。
たとえば、20年前に1,000万円で新築された家が全焼した場合、価額協定特約をセットした保険に再調達価額ベースではいっていると、保険金額は1,230万円となります。さらに、特別費用保険金が別途に損害保険金の10%支払われますので、
1,230万円 + 123万円 = 1,353万円が支払われる保険金です。
つまり建て換えできるくらいの保険金がでます。
一方、特約がない長期保険の場合には、時価評価が損害額の上限ですから、861万円が支払われる保険金です。計算は以下の通りです。
再調達価額1,230万円 X (100%-経年減価率1.5%x経過年数20年)
せっかく、火災保険をかけていたのに、もらえる金額は特約が付いている契約に比べて、その三分の二しかありません。ぜひとも、価額協定特約を付けてください。また、5年超の保険には地震保険が付けられません。
こんなことは、保険を職業とする人にとっては常識ですから、プロは当然のように、この特約を付けることを勧めると思います。最長でも5年の保険の場合が多いので、この特約を付けるデメリットもあります。料金の長期割引が少ないことです。5年分の保険料を一括払いすると17%の割引がありますが、30年分の一括払いですと46%の割引となります。この料率の割引と建て替え費用をカバーできることとのどちらを優先するのか、ぜひご自分で選んでください。万が一の時に、後悔することにならないように・・・
また、ツーバイフォーや鉄筋コンクリート、などの耐火性の強い建物の場合には、割引保険料率が適用されます。しかし、窓口でそんな説明をせずに、標準仕様の保険料率で高額の保険料を請求している場面をよく見ます。
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