長期優良住宅/長く暮らせる家

「200年住宅」の200年はどこから来た?(2ページ目)

福田首相が掲げた「200年住宅ビジョン」はいま「長期優良住宅法」として、今年6月の施行に向けて内容が協議されています。そもそもこの「200年」はどこから来た数字なのか、某メーカー担当者に聞きました。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

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築300~500年の世界の古民家を研究した答え

古民家
同社が研究した一つ、兵庫県の千年家(以下、写真提供いずれもミサワインターナショナル)
同社がモデルとして研究した世界の古民家とは、「ドイツ・フロイデンベルグ(350年)」、「米ペンシルバニア(320年)」、「イングランド・ストーク・オン・トレント(500年)」、「フランス・オンフルール(600年)」「中国・北京(300年)」、そして日本が誇る「京都(400年)」、「群馬・桐生(450年)」「山口・萩(240年)」……。

ヨーロッパの古い家というと、レンガや石造りのイメージがありますが、本当に古くから残っている家の多くは木構造でもあり、しかも建っている土地からほど遠くない地元材を活用。また、法隆寺のように古い木造建築ほど強度があるのは、乾燥が月日を経て進んでいるから。裏を返せば、木造の耐久性は乾燥度合い如何によるということが言えます。同社では木造の耐久性を左右する乾燥度合いについて、含水率を15%以下の集成材とすることで品質と性能を安定させ、日本の森を再生するため国産スギを使用しています。

大断面
柱や梁などの構造材を「現し」にした大断面構造
さらに、構造材を大断面にして「現し」で使うことで、木は呼吸を続けて耐久性を保ち、さらに乾燥が進んで強くなるほか、傷み具合を住まい手や業者が気づきやすくなり早めの補修が可能に。一般に流通している柱が三寸五分(105ミリ)のところを、同社は古民家にも使われていた五寸角(150ミリ)の柱や一尺(300ミリ)の梁など、一般の構造材の2倍近い木材料を使うことで、柱や梁が織りなす「現しの美」を生むほか、ビニールクロスや内装材で覆わないためコストも低減できるとしています。

超長期住宅先導的モデル事業にも採択

古民家内観
伝統的な「間面のつくり」は将来も再生しやすい(写真は北九州の再生した古民家)
さらに興味深いのは、古民家版スケルトンインフィルとも言うべき「間面のつくり」。あえて現代的な特殊設計技術でなく、柱と梁とでシンプルに区画された伝統的な構造設計を基準とすることで、今後100~200年経って時代や技術が様変わりしても、部分的な手入れやリフォームが可能に。古民家を現代に再生するように、現代の家を築100年目以降も再生できるスケルトン構造とすることで、「築100年目以降も再生できる家」を提案しています。

これら、「地産地消(日本の場合は国産材や地元材を使う)」、「大断面集成材」「乾燥」「構造材を現しにして使う」「間面のつくり」の5つが、同社が世界の古民家から導き出したテーマであり、これを反映させたのが同社の「HABITA」ブランドです。

HABITAモデル
平屋「SORA・MADO」。モデルは「HABITAさんぶの杜」(千葉)にある
同社のこれらの考え方は、「HABITA超長期住宅」として、国土交通省の第1回目超長期住宅先導的モデル事業に採択されています。「HABITA」という名には、「いつまでも残り続ける、家族の歴史にとっての実家とも呼べるような住まい」という想いが込められているとか。

家族の歴史や地域の歴史が残っているから、壊すに忍びない。「新しい技術や性能だけじゃない、古民家を再生させる技術こそが究極のエコであり、200年住宅である」というユニークな考え方にも、長期優良住宅の一面が見えてきそうですね。

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