土地や一戸建て住宅を購入する場合には、隣地などとの土地境界に十分な注意が必要です。
新しい分譲地などにおける区画同士の土地境界なら、それほど神経質にならなくても大丈夫なのでしょうが、古くからある住宅地の中で1区画だけが売り出されている中古物件や土地を購入する場合には、細心の注意を払わなければなりません。
一つひとつの土地が広くて価格も安かった昔には、土地境界が1メートルずれていてもお互いにあまり気にしなかったでしょうが、現代では土地境界が1センチメートル違うだけで数十万円あるいは数百万円という価格の差になるため、土地境界をめぐるトラブルも多いのです。
また、争いの相手方は長年顔を突き合わせていくことになるお隣さんであり、お互い気持ちよく暮らしていくためにも土地境界トラブルはできるかぎり避けたいものです。
そこで今回は、土地境界トラブルを避けるため事前に確認しておきたい基本的な内容をまとめてみました。
まず売主に確認をする
初めに売主から隣地や道路との境界位置を「現地にて」明示してもらいます。このとき、売主が認識している土地境界と隣地所有者などが認識している土地境界が、必ずしも一致しているわけではありません。要するに、この認識が不一致の場合にトラブルが生じるのです。また、売主に対して「隣地との間で土地境界をめぐるトラブルが生じていないか」を確認することも大切です。
現在進行形のトラブルがあるなら、その物件の購入はやめたほうが賢明でしょうし、「過去にトラブルがあったがすでに解決した」というのであれば、それを客観的に確認できる資料を求めるべきです。
しかし、「トラブルがある場合に、売主は買主へそれを告げる義務がある」といったところで、売主が正直にすべてを告げるかどうかは疑問です。告げたら売れなくなるか、大幅に買い叩かれることを心配する気持ちもあるでしょう。
また、トラブルの存在を告げられないままで購入してしまったとき、売主の責任を追及できたとしても、なかなか根本的な解決には至りません。
さらに、今まではまったくトラブルなどがなかったものの、土地や一戸建て住宅の売買で所有者が変わったことをきっかけに隣地所有者の態度が変わり、トラブルに発展することもあるので厄介なのです。
境界標識を念入りに確認する
売主が指し示す土地境界に、ステンレス鋼、石、コンクリート、合成樹脂などの「耐久性があって、かつ、容易に移動しない境界標識(境界石、境界杭、境界標、境界ポイント)」が埋設されていれば比較的安心でしょう。これらの境界標識は、たいてい隣地所有者なども立ち会ったうえでお互いに確認した土地境界点に、土地家屋調査士などの有資格者が設置したものです。
また、これらの境界標識はたとえその費用を負担した人であっても、勝手に移動させたり抜いたりすると法律で罰せられることになっています。
ただし、過去に境界標識が設置されていても、それが長年を経るうちに地中深く埋もれてしまったり、工事の過程で紛失してしまったりすることもあります。土地を深く掘り返してようやく見つかることもあるのです。
正式な境界標識ではなく、赤ペンキで印をつけただけの境界ポイントもありますが、もちろんこれはあまり信用することができません。
官民査定を検討する
土地境界は民有地同士のものだけではなく、敷地と公有地(道路、水路、公園、公共用地など)の境界も存在します。公有地との境界を明確にさせるためには管轄役所の担当者立ち会いのもとで測量をすることが必要で、これを「官民(かんみん)査定」といいます。ちなみに、民有地同士の境界確認のために行なう測量を民民(みんみん)という場合もあります。
しかし、官民査定をするためには時間や費用がかかるうえ、役所の都合に合わせて平日に関係者が立ち会わなければならないため、実際の土地や一戸建て住宅の売買では、官民査定までは要求しないケースも多くなっています。
官民査定を省略した場合に、周囲の道路ラインの延長線上に対して、検討する土地がはみ出して見えるようなことがあれば十分に注意しなければなりません。
なお、その土地に対して過去に官民査定を実施していれば、役所の担当部署にその図面が保管されています。
土地の測量図を確認する
ひとくちに測量図といっても、その作製目的により内容はさまざまです。敷地に接するすべての隣地所有者などの立ち会いと確認の署名・押印をもらい、さらに公有地との境界について官民査定を実施したうえで有資格者が作製した「確定測量図」(境界確定図)があれば安心です。それに対して、隣地所有者などの立ち会いと署名・押印はもらったが官民査定は省略した「現況測量図」、隣地の立ち会いもない「現況測量図」や「実測図」、分筆登記をするための「地積測量図」などもあります。
分筆登記のための「地積測量図」が、検討する土地だけでなく隣地すべてについて存在し、なおかつ同じ境界標識が図面上に記されていればあまり問題はありませんが、この条件が揃うのはレアケースでしょう。
測量図の名称が何であれ、大事なのは隣地の立ち会い印があるかどうかです。
土地や一戸建て住宅の売買では、実測売買(あらかじめ土地の単価を決め、実測の結果によって代金総額を確定させる)だけでなく、登記簿売買(先に代金総額を決め、実測による精算を行なわない)のことも多くなっています。
しかし、隣地立ち会い印のある測量図が存在しない場合には、たとえ登記簿売買のときであっても、隣地所有者などの立ち会いのもとで有資格者による測量を求めることが賢明です。その費用負担をどうするのかという問題もありますが……。
関連記事
不動産売買お役立ち記事 INDEXガイドの不動産売買基礎講座 INDEX
住宅を買うときは敷地境界の確認を念入りに!
境界標、境界ポイント
筆界特定制度の基礎知識
隣人トラブルがありそうな住宅のときには?