不動産売買契約書について、前回は売買対象面積、境界の明示、土地の実測、代金の清算などのポイントを説明しました。引き続き今回は、所有権の移転と引き渡し、登記申請、引き渡し前の危険負担などに関する条項をみていくことにしましょう。
所有権等の移転および引き渡し

なお、建物がある場合でも鍵の引き渡しに加えて、「引渡確認書」のやり取りをすることが少なくありません。
また、売主の買い換えや、買主の資金借り入れの都合などにより、売買代金の支払い(=所有権移転)と物件の引き渡しを異なる日付に設定することもあります。
所有権移転と引き渡しが同時でない場合には、万一の事態(売買代金の全額を支払った後、引き渡しを受ける前に類焼してしまった、あるいは売買代金の全額を支払う前に「先行入居」し、実際の支払い前に類焼してしまったなど)が生じたときの処理方法、責任の帰属などを十分に確認しておくことが必要です。
なお、民法では売買契約の成立時期に所有権が移転するものとされていますが、現実には売買代金の全額を支払ったときに移転すると考えるのが普通でしょう。万一、この条項がないと民法が適用されることになるため、大きなトラブルへと発展しかねません。
抵当権等の抹消

もちろん、売主に資力があれば事前に抹消されるのに越したことはありません。
多くのケースで該当するのは抵当権もしくは根抵当権ですが、何らかの仮登記や差押登記、その他の登記がある場合も取り扱いはほぼ同様です。また、登記されていない負担の除去や、第三者による占有の排除などについては、その確認方法を明確にしておくことが必要です。
引き渡し後も存続する何らかの権利(賃貸用不動産における借主の権利など)があれば、その旨が特約条項などに記載されることになります。
所有権移転登記等

また、取引の形態によっては所有権移転登記の申請を留保するケースもありますが、そのような可能性も想定したうえで「所有権移転登記の申請手続きをする」ではなく、「所有権移転登記の申請手続きに必要な一切の書類を引き渡す」としている契約条項の場合もあるでしょう。
引き渡し前の滅失・毀損等

このような損害について、民法では買主が負担することになっており、たとえ建物が焼失しても買主は売買代金の全額を支払わなければならないことになりますが、現代の不動産取引では民法の考え方を否定し、このような条項を入れることが一般的です。
なお、この条項による契約解除はあくまでも白紙解除とするものであって、どちらかが相手方に対して損害賠償の請求ができるものではありません。
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