【ガイドの不動産売買基礎講座 No.102】


不動産売買契約書について、前回は手付解除、契約違反による解除と違約金の定め、融資利用の特約などのポイントを説明しました。引き続き今回は、付帯設備の引き渡しと買換え特約、紛争防止のための基本的で大切な条項などをみていくことにしましょう。


付帯設備の引き渡し

付帯設備の引き渡し
中古物件の場合、建物躯体部分が売買対象に含まれることは間違いありませんが、建物に付帯する設備がどこまで含まれるのかは曖昧になりがちです。

そこで、売買契約書とは別途に「付帯設備表」を作成し、そのまま買主へ引き渡すもの、売主が取り外して持っていくものなどを明確にすることが多いでしょう。

ただし、単に設備が付いているかどうかだけではなく、その設備に不具合や故障などがないか、使用にあたって通常と異なる点がないかなど、細かく確認することが欠かせません。

たいていの場合、メーカーによる保証期間も過ぎている設備であり、故障などがあれば売主による撤去を求めたほうがよいケースもあります。また、設備の故障などについては「瑕疵担保責任を負わない」とすることが一般的です。

なお、付帯設備以外の建物躯体部分の状況については、「物件状況報告書」などの書類を売主から買主へ交付したうえで、一定の説明をするようにしている不動産業者が多いでしょう。


反社会的勢力の排除

反社会的勢力の排除
2011年10月までに各都道府県で暴力団排除条例が施行されたことに伴い、不動産の売買契約書などにも「反社会的勢力排除条項」が盛り込まれるようになりました。

売主と買主のどちらも反社会的勢力やその関係者に該当しなければとくに気にする必要もない条項ですが、どちらかが「確約」に反していた場合は無催告解除が可能です。

また、上記の条項例では買主が売買対象物件を反社会的勢力の事務所などに供したと認められる場合に、売主は契約解除したうえで、売買代金の20%相当額の違約金および80%相当額の制裁金(違約罰)を買主に課すことができる内容となっています。

売買代金の20%+80%=100%の違約金・制裁金ですから、実質的に売買代金全額の没収と考えてよいでしょう。

ただし、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者ではない場合の契約では、宅地建物取引業法の規定(違約金などの合計額が20%を超えることができない)により、80%相当額の制裁金は適用できません。


買換え特約

買換え特約
買換え特約をあらかじめ印刷された売買契約書に盛り込んでいる不動産業者はほとんどなく、たいていは特約事項として追加するものです。

条項の文面もまちまちなのが実態ですが、一定期日までにあらかじめ定めた金額以上の売却代金を受領できなければ、購入の契約も解除できるように、その内容が明確にされていればトラブルを避けられます。

ただし、この特約があると売主の立場が極めて不安定な状況に置かれるため、どの売主(どの物件)でも応じてもらえるというわけではありません。

買換えによって新たに住宅を購入する場合には、単に気に入った物件を選ぶだけでなく、買換え特約に応じることのできる売主の物件を選ぶことが必要になる場合もあるでしょう。

また、買換えがからむ場合には、不動産業者による買取り(下取り)特約を追加する場合もありますが、このときも買換え特約と同様に、その内容が明確になっているかどうかに注意しなければなりません。

なお、買取り特約などについては売買契約書内の特約とせず、別途に「覚書」や「条件付買取り契約書」などを作成する場合もあります。


諸規定の承継

諸規定の承継

不動産の利用には法的な制限だけではなく、マンションの場合における管理規約や使用細則、土地や一戸建て住宅の場合における建築協定など、さまざまな取り決め事項や規定があります。

それらのなかには法的な拘束力をもたないものもありますが、地域住民との間におけるトラブルを避けるためには、法律上の規定でなくてもしっかりと遵守したいものです。

買主が無用な近隣トラブルに巻き込まれないために、売主は物件にかかわるすべての規定を伝えるとともに、買主はそれを理解するようにしなければなりません。


管轄裁判所

管轄裁判所
裁判になるような争いは、売主も買主も仲介業者も避けたいはずですが、残念ながら大きなトラブルになってしまうこともあるでしょう。訴訟を提起する場合の管轄裁判所は、お互いの合意がなければ原則として被告の住所地を管轄する裁判所となります。

不動産取引にかかわる訴訟の場合は原告、被告、仲介者、その他関係者などが物件所在地の近郊に住む割合が高いため、この条項のような定めをしておくケースが多く、「◯◯地方裁判所」のように指定をすることもあります。


規定外事項の協議義務

規定外事項の協議義務
売買契約書に定められた条項によって、あらゆる事態に対処できるわけではありません。また、トラブルに発展するような事態となるときには、事前にまったく予測できなかったようなことが原因となるケースも多いでしょう。

ほとんどの売買契約書で一番最後に記載される、おまけのような条項ですが、実はこれが一番大切な部分です。

何らかの問題が起きそうになったとき、当事者双方が「お互いに誠意をもって話し合うこと」が重要であり、この条項によって売主も買主も、イザというときにはしっかりと話し合うことを約束するものです。


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