不動産売買の法律・制度/不動産売買の手続き

購入の意思決定~住宅購入の流れ・手順 1(2ページ目)

住宅購入で正しい選択をするための第一歩は、その流れや手順をよく理解することから始まります。購入の意思決定から売買契約、引き渡しまでの流れや手順、それぞれの注意点を、これから6回にわたり解説していきます。(2017年改訂版、初出:2004年10月)

執筆者:平野 雅之


損得計算だけで判断しない!

いろいろな住宅雑誌やwebサイトなどには、住宅を購入した場合と賃貸に住み続けた場合の比較試算が掲載されています。どの試算でもおおむね30年~35年程度で両者の支払い総額が同じになり、それ以降は賃貸の負担が購入の負担を上回るようになっていることでしょう。

しかし、これらの試算はほとんど30年~35年間の経済水準、金利水準などがいまとあまり変わらないことを前提として出されたものにすぎません。現実問題として将来に何が起きるのか、たとえ高名な経済学者であろうと正確な予測は不可能です。

電卓による計算

どちらが本当にトクなのか、机上計算で答えが出るものではない

もし将来の賃貸相場が暴落し、都市部のファミリータイプマンションでも月額賃料が1万円程度になるような可能性を想定すれば、とてもいま住宅を購入するべきではなく、個人の収入も大きく減っていることが考えられます。

逆にインフレが続き、数十年後の平均年収が1億円(あり得ない話ではありません)になっているような社会を想定すれば、多少の無理はしてもいまのうちに住宅を買っておくべき(住宅価格も暴騰している)という結論を導くこともできます。

それらは極端すぎる想定かもしれませんが、たとえいまの試算でどちらがトクとされていても、本当にどちらがトクだったのかは、数十年後、あるいは遠い将来あなたが亡くなるときになってみなければ分からないのです。机上の損得計算だけで判断するべきではないでしょう。

それでも試算を拠りどころにしたいときには、あなたが希望するエリアの特性を加味した分析をしてみることが必要です。

「購入すれば将来に資産が残る」といういい方もされますが、エリアによっては数十年後にそれこそ二束三文の資産にしかならない可能性も十分に考えなければなりません。


早く物件を見てみたいけれど……

部屋のインテリア

自分の意思が固まらないうちに物件を見るときは、より冷静な視点で

買うか買わないか自分の意思を決めるためにも、「その前にまず物件を見てみたい」「現物を参考にしたい」と考える人も多いでしょうが、ここはもうしばらく我慢です。

自分の意思が固まらないうちにやみくもに物件を見てもあまり参考にならないばかりでなく、とくに新築のモデルルームなどは実物以上にすばらしく感じられ、冷静な判断ができなくなることもあるでしょう。

どうしても見たいのであれば、「まだ購入するかどうかを決める以前の検討段階である」ということを相手先(不動産業者など)に明確に伝えることが重要です。

あいまいな意思表示のまま物件見学をして不動産業者のペースに乗せられてしまい、「買うつもりじゃなかったのに、いつの間にか契約していた」「考えていたのとぜんぜん違う物件を買っていた」という人も現実に存在します。

また、意思をあいまいにすることによって中古物件の売主(個人の売主)などに思わぬ迷惑を掛けるケースもあります。

住宅購入にはさまざまな人が絡みますから、購入意思決定前の段階に限らず、どの時点であっても自分の考えを明確に相手に伝えることが欠かせません。


「買うぞ」と決めたら次の流れ・手順へ

だいぶ否定的な見方を多く挙げたように感じられるかもしれませんが、要するに冒頭に書いたような条件に当てはまらない大多数の人は、購入に向けて次の段取りへ進めばよいのです。

残念ながら住宅購入に向かない少数の人は、もうしばらく様子をみるか、賃貸住宅に住み続けることが賢明でしょう。

「買うぞ」と決めた人は次に資金計画を練ることになりますが、もちろん軌道修正はいつでも必要で、買うと決めたからといって、必ず買わなければならないなどということはありません。


【住宅購入の流れ・手順】
1 購入の意思決定
2 資金計画を立てる
3 住宅選びの前準備
4 情報収集・物件見学
5 購入物件の決定
6 売買契約・引き渡し


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