売買契約締結後に万一、住宅ローンを借りることができなかったときには契約を白紙解除できるという「住宅ローン特約」ですが、これを安易に考えるとトラブルの原因になります。
しかし、契約後に正式な申込みをしたところ、一転して「融資できない」という銀行の回答でした。売主(個人)は「手付金を放棄して解約するように」と言っているようです。また、仲介業者の担当者は「別の金融機関を紹介するから大丈夫だ」と言っているのですが不安でたまりません。どうしたら良いのでしょうか?
(神奈川県藤沢市 匿名 30代 女性)
ローン特約がないまま、融資の承認が得られないと大変なことに!
事前の内定はあくまでも内定にすぎず、融資の正式な承認ではありません。何らかの事情によって内定が取り消されることもあり得るわけです。
売買契約書にこの「住宅ローン特約」がないままで住宅ローンを借りることができなければ、何らかの手段で売買代金に充てる資金を調達しないかぎり、支払った手付金を放棄して契約解除するか、または所定の損害賠償金や違約金を請求されることになってしまいます。
その一方で、当然ながら媒介業者の責任も考えざるを得ないでしょう。
銀行の事前審査による内定があったことで安易に「住宅ローン特約」を外してしまったのか、単純に売買契約書へ入れることを忘れたのか、あるいは「住宅ローン特約」を入れない何らかの理由(住宅ローン特約を付けないことが売主の条件だった場合など)があったのか、その原因は定かではありません。
しかし、仮にこの特約を入れないことについて正当な理由があったとしても、そのことにより買主が負うリスクを十分に説明していなければならなかったはずです。
もし、そのような説明もないままに売買契約が締結され、ご質問のような事態に陥っているとすれば、媒介業者に対して損害賠償を請求することができる余地もあるでしょう。
ただし、内定があったにも関わらず融資の承認が下りなかったことについて、買主に何らかの原因があったとすれば、かなり難しい状況かもしれません。
事前審査の段階で申し出た勤務先の内容、職種、勤続年数、年収など、審査のうえで重要な事項について虚偽の内容があったり、提出書類を故意に書換えていたりして、それが正式審査の段階で発覚したような場合です。
あるいは、売買契約を締結して住宅ローンを申込んだ途端に会社を辞めてしまったというのも、実際にあった事例です。
買主に何ら責任がないとしても、銀行の審査方針が急に変わってしまったり、買主に予期せぬ突発的な事態が生じたりすることも考えられます。事前の融資内定があったとしても、万一の場合に備えて売買契約書に「住宅ローン特約」を入れておくことが欠かせません。
また、このような場合に媒介業者が他の金融機関を紹介して、再度住宅ローンの申込みをすることはよくあるケースです。ところが、承認されなかった住宅ローンと同等の返済条件のものであれば、他の金融機関でもほぼ同じレベルの審査が行なわれます。
つまり、返済条件の内容が劣るもの(金利が高いもの、リスクが高いもの等々)に変えないかぎり、再度申込んでも同様に審査は通らないケースが多いでしょう。
毎月の返済金額が増えても十分に余裕のある資金計画なら、それでも良いかもしれません。しかし、いったん審査が通らなかった時点で「一般的には、余裕がない買主の内容」とみなされているわけです。
媒介業者から言われるままに複数の金融機関へ次々と申込みを入れることは避けてください。複数の申込みを繰り返すことで、不利に判断されるデータも蓄積されてしまいます。
しかし、「ハイ、そうですか」と支払い済みの手付金をあっさりと放棄するわけにもいかないでしょう。媒介業者に対して交渉をする(媒介業者の責任が認められる場合など)のと同時に、売主とも誠意をもって話し合うようにしてください。
住宅ローン特約がなかったとしても、白紙解除に応じてくれる売主は多いはずです。
しっかりと住宅ローン特約があるのに、なかなか契約解除に納得してくれない売主がいて困ったこともありますが……。
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