不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

融資利用の特約のポイント

住宅ローンを利用して住宅を購入するときには、売買契約書のなかに「融資利用の特約」を盛り込んでもらうことが大切です。この「融資利用の特約」について注意すべきポイントを確認しておきましょう。(2017年改訂版、初出:2002年8月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.18】

個人が家を購入するときには、住宅ローンを利用することが大半です。この住宅ローンが売買契約のなかでどのように取り扱われるのか、確認しておくことにしましょう。


「融資利用の特約」とは?

住宅ローンを申し込む際に、通常は契約済みの「売買契約書」を金融機関へ提出します。そのため、融資の申し込みよりも先に売買契約を締結しなければなりません。

事前に打診をして内定を得ることはありますが、正式に住宅ローンの融資を受けられるのかどうかは、申し込みをした後でなければ確定しないのです。

そこで登場するのが「融資利用の特約」(ローン条項、ローン特約など呼び方はいろいろあります)です。もし、この特約がないと、たとえあなたが住宅ローンを借りられなかったとしても、売買契約による代金全額をどこかから調達して支払わなければならなりません。

「融資利用の特約」では、売買対象物件の引き渡し日までの間に相当の期日を定め、その期日までに申し込んだ金融機関などから融資の承認を得られない場合には、いったん成立した売買契約を解除することができ、契約締結の際に支払った手付金も返還してもらえます。


「融資利用の特約」の注意点

この場合に注意しなければならないのは、あらかじめ申し込み金融機関や申し込み金額、融資条件(利率、返済期間など)を明確にさせておくことです。

住宅ローンの融資を受けられさえすれば、どの金融機関でも、どんな条件でも構わない、などということはないでしょう。自分の返済能力に見合った融資条件を不動産業者の担当者とよく話し合い、それより悪い条件だったら借りないというラインを決めておかなければなりません。

また、「融資利用の特約」のなかで、融資の承認が得られなかった場合に「契約を解除する」としているものと、「買主は契約を解除することができる」としているものがあります。

前者は無条件で解除となるのに対して、後者は売主に対し契約解除の意思表示を期日までにしなければなりませんから注意が必要です。

「融資利用の特約」をめぐってトラブルが多いのは、買主が契約続行の意思をなくして、わざと申し込みをしなかったり、必要な書類を提出しなかったりする場合です。このときは「融資利用の特約」の適用云々の前に、買主の契約不履行の問題を問われることになるでしょう。

さらに、初めに申し込んだ金融機関で融資を断られたにも関わらず、媒介業者が何とか住宅ローンを通そうと他の金融機関に再度申し込みをしているうちに、「融資利用の特約」の期日を過ぎてしまった、というトラブルも実際には多いようです。

この場合は媒介業者の責任を問われることになりますが、買主も不測の損害を被る結果になりかねません。

事前の話し合いはもちろんのことですが、住宅ローンの申し込み後も綿密に媒介業者と連絡を取り合い、「ここがダメだったらダメ」という意思表示をはっきりさせておくべきです。

「融資利用の特約」にかぎらず他の事項にも共通しますが、不動産の売買契約では優柔不断がトラブルの一因になります。毅然とした態度で契約に臨むことが欠かせません。


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