明らかに説明義務が生じるレベルのケースで買主への説明を怠ったとき、あるいは知っているのに隠したようなとき(現実にはその実証が難しい)には、不動産業者の責任を追及することもできます。しかし、そうではない程度のゴミ屋敷の場合にはどうなのでしょうか。
ゴミ屋敷問題の説明義務そのものに対する判例ではありませんが、他の類似判例などから推測すると「不動産業者に積極的な調査説明義務はない」とするのが一般的な考え方のようです。
これは、一般の人よりも慎重な観察力があれば発見できるもの、あるいは、事前に知っていたものについては説明義務があるけれども、それ以上の積極的な調査義務(周辺の住民に聞き取り調査をしたり、半径○○メートル以内の住戸を調べまわるような調査義務)を不動産業者に課すことはできないというものです。
ゴミを溜めるのも個人の自由?
いざ、トラブルが起きると「マンションの管理人に聞けば分かったハズなのに」とか「町内会長さんに聞けば教えてくれたのに」というケースも考えられます。
しかし、そのような状況であれば売主がゴミ屋敷の存在を知っていて当然と考えられ、売主が不動産業者に伝えることを怠ったという判断になることが多いでしょう。もちろん、このあたりの話になると業者による対応力の差も出てきてしまいますが……。
ただし、売主自身が不動産業者である場合や、物件所在地の地元に密着し精通しているべき不動産業者の場合、あるいはゴミ屋敷の存在そのものが相当に知られている場合などには、不動産業者の責任がより重く判断されることも考えられます。
いずれにしても、物件に対する心理的要因あるいは環境的要因に関しては非常に難しい問題を孕んでいます。
今回はゴミ屋敷の問題を説明しましたが、想定される「ありとあらゆる問題」について不動産業者が調査しようとすれば、それこそ丸1年かかっても調査しきれないという事態にもなるでしょうし、また、必要経費として1千万円以上頂戴しなければ調査できないということにもなりかねません。
裏を返せば、不動産業者による物件の調査には限界があり、調査義務がないような事項も現実には数多く存在します。宅地建物取引士による重要事項説明で、何もかもが説明されるというわけではないのです。
購入者としては、気になる部分は自分でも調べてみるくらいの心構えも必要でしょうし、売買契約締結の前に売主へ積極的な質問をすることも大切になってきます。
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