起算日の違いによるそれぞれの問題点
どちらが正しいともいえない暦年方式と年度方式ですが、それぞれに問題点も抱えています。まず、1月1日を起算日とした場合、物件の引き渡し日が1月1日から3月31日の間のときに清算対象となる固定資産税等の年額が確定できません。その年の固定資産税等の納税通知書が送られてくるのは4月下旬から5月頃ですが、4月1日以降であれば役所にて税額の確認はできる(自治体によっては3月中に確認ができる)わけです。
そこでこのような場合、実務的には前年の税額を基にして日割り計算をしたうえで売主と買主の間の清算を済ませることがあります。実際の税額とは若干の違いが生じる場合もありますが、お互いにあらかじめ納得してもらうほかありません。
また、正確を期するために固定資産税等の清算だけを後日に行なうこととし、実際に売主のところへ納税通知書が送られてきてからやり取りをする場合もありますが、一連の契約行為が終わり日数が経ってからのことになるため、スムーズに処理できないケースもあるようです。
一方、4月1日を起算日とした場合、物件の引き渡し日(所有権移転日として登記された日付)が1月2日から3月31日の間のときに、既に固定資産税等の清算が終わっているにも関わらず、その年の納税通知書が前の所有者である売主のところへ行ってしまうことになります。
あらかじめ買主がそれを理解し、売主のところへ納税通知書が送られてきたらすぐにその分を買主から売主へ送金すればよいのですが、買主からみれば固定資産税等の清算をしてからほんの数か月後に1年分の負担義務が生じるため、あまり気持ちよく支払えるものでもないでしょう。
固定資産税等には消費税が課税される!?
不動産の売買における固定資産税等の清算は、前述したとおり法律上の決まりが何もありませんが、不動産業者を含めて一般の人にとっては、売主と買主が公平に “税金” を負担し合っているという感覚でしょう。ところが、国税庁の見解(通達)によれば「買主の負担分は税金ではない」とされています。
「税金ではない以上、それは物件の譲渡対価(売買代金)の一部だ」ということで、消費税の課税業者(大半の不動産業者は課税業者です)が売主となる不動産取引における固定資産税等の清算金額のうち、建物に相当する金額については消費税が課税されることになっています。
実際のところ、大手業者では消費税相当額を加えて清算金額を算定するところが多く、中小業者の場合には対応がまちまちのようです。
中小業者で消費税相当額を加えない場合の理由としては、「買主の負担が減るのだから、そんな細かいことは考えなくていい」「国税庁の見解に反対だから」などや、その通達の存在自体を知らないところまでさまざまでしょうが……。
こんな請求をされたら要注意!
≪固定資産税と都市計画税の基礎知識≫ でも触れましたが、建物の固定資産税等は1月1日時点で完成しているものに対して課税されます。したがって、1月2日以降に完成した新築物件では、その年の建物に対する固定資産税等はないことになります。ただし、1月1日時点で “ほぼ” 完成している建物については「完成済み」とみなされることもあるため、登記上の新築日付が1月中になっていても課税されるケースはあります。
たとえば、5月に完成した新築マンションや新築一戸建て住宅を6月に引き渡す場合、建物に対する税額はなく、固定資産税等の清算は土地についてのみ行なわれるはずですが、なかには建物の固定資産税等と称して架空の日割り金額を請求する不動産業者もあるようです。
某大手マンションデベロッパーの試算表をお客様から見せられたときに、この金額が記載されていて(たしか、9月完成10月引き渡しの物件で試算表は8月に作成されたものでした)びっくりしたこともあります。
新築一戸建て住宅の場合には、1月1日時点で古家があって建物分の課税がされ、その年のうちに取り壊し、新築工事、引き渡しまで行なわれることもありますが、そのときでも古家分の固定資産税等を日割りで買主に請求するのはおかしなことでしょう。
なお、1月1日時点で建築工事中だった場合、建物分については課税されないものの、土地については住宅用地としての軽減が受けられずに高い税額を基として日割りが行なわれることも多いようです。
また、土地の権利が借地権の住宅であれば、日割りで清算されるのは建物の固定資産税等だけであり、土地については清算がありません。その代わりに地主へ支払う土地の地代を日割りで清算するわけです。
さすがに借地権の物件で、土地にかかる固定資産税等の日割り分を架空請求した事例は聞いたことがありません。
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