不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

市街化調整区域の土地でも家は建つ!?(2ページ目)

市街化調整区域では、原則として新築住宅を建てることはできませんが、例外的に建築が許可される場合もあります。しかし、気をつけるべき点も多くあるため、安いからといって安易に購入することは考えものです。(2018年改訂版、初出:2005年11月)

執筆者:平野 雅之


都市計画法による「既存宅地」の制度は廃止されたものの、この制度に代わる救済措置を維持しようと、それぞれの自治体により独自の基準を設けるところが多くなっています。

それらの基準に合致する宅地では、都市計画法による許可(開発審査会による許可)を受けることができ、建築確認も下りることになります。ただし、建物の用途や規模などについては、比較的厳しい条件が付けられているケースが多いでしょう。

市街化調整区域内の高架道路

都市近郊では、市街化調整区域内の土地が道路施設用地となることも

しかし、注意しなければならないのは、たとえ自治体の基準に合致している宅地だとしても「都市計画法による許可が100%約束されるものではない」ということです。

このような土地を購入するときは「一定期日までに建築確認を取得することができなければ白紙解除する」という旨の特約条項を売買契約書に盛り込んでもらうことが重要です。

そして、売買契約を締結した後、速やかに建築確認の申請ができるように準備しておかなければなりません。

さらに、住宅ローンを利用する際にも注意が必要です。金融機関によっては市街化調整区域の土地に対して融資をしなかったり、かなり減額されたりするケースもありますから、売買契約書の中での「融資利用の特約」を明確にし、曖昧さを残さないようにすることが大切です。

また、今回は建築確認を受けられてその土地の購入に至ったとしても、「将来の建て替え時にはどうなるのか分からない」というリスクを抱えていることも理解しておかなければなりません。

数十年後に売却しようとしたとき、売るに売れないという事態に陥ることもあり得るのです。自治体によっては、「従来から所有している人やその関係者ならば建築を許可するけれども、その土地を購入した第三者には許可しない」という場合も考えられるでしょう。

十分に整備されていない道路

市街化調整区域内では道路の歩道整備も遅れがちで危険なことも

さらに、敷地の周辺が公道だとしても自治体による舗装や整備が後手に回りがちなこと、あるいは下水道をはじめ生活に欠かせないインフラの整備などで、市街化区域ならば自治体が負担したり助成したりする工事でも、個人の全額負担とされるケースがあることなどにも注意が欠かせません。

幹線道路の歩道整備なども市街地より遅れがちであり、危険箇所が多く残されていることもありますから、入念な事前調査もたいへん重要です。

河川の流れに沿って線状に市街化調整区域が指定されているような場合には、水害の危険度が高かったり地盤が弱かったりして、居住に適さないエリアであることも考えられます。

市街化調整区域ならば周囲に高い建物が建つ心配もあまりなく、静かな自然環境を維持しやすいというメリットもありますが、逆に市街化区域内での立地に適さない施設などが建設されることもあり、単純に判断することはできません。

また、虫が多くて衛生面に問題があるケース(下水道整備や水路管理が行き届かない)や、整備の遅れた道路に廃棄物が散乱したままになっているケース(清掃が行き届かない)、田畑に続く道路が駐車場代わりになっているケース(取り締まりが少ない)などもあります。

一般の市街化区域内の土地よりも安いという大きなメリットはありますが、たいていは不便なエリアであり、近くにコンビニなどができる可能性も低いでしょう。

価格だけで判断せず、さまざまな要素を基にして総合的に考えてみることが必要です。なかには市街化区域に隣接し、ほとんど不便さを感じさせないようなところもありますが……。

なお、たとえば媒介業者から「都市計画の見直しで近いうちに市街化区域へ変更されます」などと説明された場合でも、決してそれを鵜呑みにすることなく、自分自身で役所などへ行って調べてみることが重要です。


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