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市街化区域と市街化調整区域の違いを知る(2ページ目)

市街化調整区域では原則として住宅を建てることができません。ところが市街化調整区域内には建売住宅や中古住宅、売地も……。ちょっと不思議な市街化調整区域と市街化区域について詳しく解説します。(2017年改訂版、初出:2007年4月)

執筆者:平野 雅之


市街化調整区域内でも宅地分譲がある!?

原則として開発行為や建築行為が厳しく制限されている市街化調整区域ですが、20ヘクタール(20万平方メートル)以上の開発行為で、開発審査会により「計画的な市街化を図るうえで支障がない」と認められたものが許可されることもあります。

なお、都道府県の条例により、5ヘクタール以上20ヘクタール未満の間で、上記と異なる基準面積が定められている場合もあります。

このような開発行為により、市街化調整区域内でも宅地分譲や建売分譲などが行なわれることもありますから、決して「市街化調整区域= “絶対に” 住宅を建てられない区域」というわけではありません。

市街化調整区域で開発許可がされるときは、建築物の用途や建ぺい率容積率などが指定される場合のほか、用途地域やいくつかの地区計画(地区整備計画)が定められる場合もあります。


市街化調整区域内の更地でも住宅を建てられる!?

2001年5月18日に施行された改正都市計画法により、市街化調整区域で新たに住宅などを建てる場合の要件が緩和されています。

改正都市計画法により追加された許可要件では「市街化区域に隣接し、または近接し、かつ自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域」で「おおむね50以上の建築物(市街化区域内のものを含む)が連たんしている地域」での開発行為を認めることになっています。

建築(開発)が認められる場合の例

ただし、この規定を適用する地域や建物間の距離(60m未満、50m未満など)、その他の許可基準などは、それぞれの自治体の条例で定めることになっており、全国一律ではありません。

市街化区域と市街化調整区域の境界からの距離、敷地の面積(最低限度、最高限度)、登記上の地目(一定の基準日以前から「宅地」として登記されていることなど)、建築可能な用途、建築物の規模、接続する道路、公共下水との接続状況などの許可基準が細かく規定されている場合もあります。

もし、このような土地の購入を検討するのであれば、事前に役所の担当窓口などで詳細を確認することが大切です。また、建売住宅や共同住宅、一定規模の店舗・事務所などが可能かどうかも自治体によって異なりますから注意が欠かせません。

農林漁業用の建築物、周辺居住者の日常生活に必要な物品の販売などを行なう店舗や事務所、鉱物資源や観光資源の有効活用に必要な建築物など、改正都市計画法以前から市街化調整区域内での許可対象となっているものもあります。

ちなみに、農林漁業従事者の住居などは都市計画法による許可自体が不要です。ただし、事前の届出や協議などが求められる場合は多いでしょう。


市街化調整区域内にすでにある住宅の建て替えは?

自治体によって手続きなどが異なる部分もありますが、いったん開発許可を受けて建てられた住宅(およびその敷地)であれば、建て替えもすんなりと認められるケースが多いでしょう。

とくに、例外的に用途地域などが定められた市街化調整区域内の敷地なら、建て替えの制約も少なくなっています。

ただし、開発許可に伴い建築物の用途が限定され、同一用途の建て替えは認められても、専用住宅を店舗兼用住宅に建て替えることや、リフォームによって既存建物の用途を変更することなどは認められない場合も多いので注意しなければなりません。

市街化調整区域

市街化調整区域内に以前から建っている住宅の建て替えが認められるかどうかは条件次第

一方、市街化調整区域に指定されるよりも前から建っている住宅も少なくありません。

このような場合、以前には「既存宅地」という制度があり、一定の要件に該当する建物であれば、都市計画法による許可がなくても建て替えが可能でした。

しかし、2001年5月18日施行の改正都市計画法によって「既存宅地」の制度が廃止されたため、建て替えなどをしようとするときには都市計画法による許可を受けなければなりません。

「既存宅地」に代わる独自の基準を設けている自治体が多いものの、「必ず許可を受けられる」というわけではありませんから注意が必要です。

なお、 旧「既存宅地」での建て替えについて詳しくは ≪市街化調整区域の土地でも家は建つ!?≫ をご参照ください。


市街化調整区域内の宅地や住宅を購入するときは?

大都市近郊の市街化調整区域では、利便性がさほど大きく変わらないのに安く売り出される宅地や住宅も多く、これらを購入しようかどうかと迷うこともあるでしょう。

一定規模以上の開発許可を受けて分譲される宅地や建売住宅などの場合には、周辺環境に恵まれたうえで上水道や下水道、ガスなどの整備もされていることが多く、日常生活には何ら支障がない物件のときもあります。

しかし、そうでない市街化調整区域内の敷地では、上水道、公共下水道、都市ガスなどが整備されていなかったり、電気や電話も離れたところから引いてこなければならなかったりするケースもあります。

市街化区域であれば自治体の負担でインフラが整備されるのに、市街化調整区域では自己負担を求められる場合もありますから、事前に十分な調査をすることが欠かせません。

市街化調整区域の土地でも家は建つ!?≫ でも説明しましたが、市街化調整区域では都市基盤の整備が遅れがちだったり、まったく予定がなかったりすることもあるので、「いずれは整備されるだろう」などという楽観は禁物です。

また、住宅の新築や建て替えなどがどの程度まで認められるのかについて、購入を決める前の段階でしっかりと確認しておくことが重要です。

もし、これまで開発許可を受けたことがなく、住宅などが建っていなかった土地なら、「許可を受けられないことが原則」であることを念頭において考えなければなりません。

さらに、住宅の建築が認められる土地だったとしても、市街化調整区域の場合には金融機関が住宅ローンの融資をしなかったり、担保評価を低くみて融資額を減額したりするケースも少なからずあるようです。

融資額を減額しない代わりに、通常の2倍ぐらいの保証料を要求する金融機関も実際にあるようですから、単純に「売買価格が安いから」だけで判断することはできません。


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