都市計画のうえで、建物が密集する都市の防災、不燃化は重要な課題です。
そのため都市計画法第9条20項で「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として「防火地域と準防火地域」が規定され、建築基準法および同法施行令によって、それぞれの具体的な制限内容が定められています。
今回はこの「防火地域と準防火地域」およびそれに類する「屋根不燃区域」について説明することにしましょう。
防火地域とは?
建物の延焼防止対策は、都市生活をおくるうえでも重要なテーマ
このような地域で指定されるのが「防火地域」で、建物は原則として耐火建築物、つまり一般的には鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築物にしなければなりません。
ただし、地階を含む階数が2以下で、かつ、延面積が100平方メートル以下の建築物は準耐火建築物とすることができます。
また、次の建築物や構造物には防火地域の制限が適用されません。
〔防火地域の適用除外〕(一部抜粋)
□ 延面積が50平方メートル以内の平家建ての附属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの
□ 高さが2mを超える門または塀で、不燃材料で造るか、または、不燃材料で覆われたもの
□ 高さが2m以下の門または塀
なお、防火地域内においても、一定の耐火性能を有するものとして国土交通大臣の認定を受けたものであれば、木造住宅などを建築することができます。
ただし、これが認定され始めたのは近年(枠組壁工法が2004年4月、在来軸組工法が2006年10月)のことであり、まだあまり一般的にはなっていません。
従来から普及しているタイプの木造住宅は防火地域内に建てることができないため、木造住宅を建てる目的で土地を探すときには注意が必要です。
防火地域の多くは商業地域(用途地域の一種)となっていますが、たとえば東京都千代田区、中央区、台東区などのように、ほとんどのエリアが防火地域に指定されている場合もあります。
このようなエリアで「木造のための土地」を探しても、該当物件をみつけることはほとんど困難ですから、土地探しを始める前に、あらかじめ希望エリアにおける都市計画の内容を確認しておくようにしましょう。
準防火地域とは?
防火地域の外側で、比較的広範囲に「準防火地域」が指定されるケースが多くなっています。規制内容は防火地域よりも緩やかで、地階を除く階数が4以上、または延面積が1,500平方メートルを超える建築物は耐火建築物にしなければなりませんが、延面積が500平方メートル以下なら一般的な木造2階建てのほか、一定の基準に適合する木造3階建ても建てることができます。
木造3階建て(500平方メートル以下)の場合は、外壁の開口部の構造および面積、主要構造部の防火の措置などについて一定の技術的基準が定められており、これに適合する建築物としなければなりません。
木造2階建てまたは平家建ての場合は、隣地から一定の距離内で延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏は防火構造としなければなりません。また、これに附属する高さが2mを超える門や塀は不燃材料で造るか、または不燃材料で覆わなければならないことになっています。
屋根不燃区域とは?
防火地域または準防火地域は、都市計画区域内のすべての地域に指定されるわけではないため、第1種および第2種低層住居専用地域などでは、そのいずれも指定されていない場合が少なくありません。ただし、その代わりとして特定行政庁から「屋根不燃区域」(「屋根不燃区域」または「屋根不燃化区域」)の指定を受けている場合もあります。
建築基準法第22条によって規定されているため「法22条区域」とも呼ばれますが、建築物の屋根や、木造建築物の外壁で延焼のおそれのある部分の構造などについて、一定の基準が定められています。
なお、屋根不燃区域は防火地域や準防火地域と異なり、都市計画区域外であっても指定することのできる制度となっています。
建築物が異なる地域にまたがる場合の適用
1つの建築物が防火地域と準防火地域にまたがる場合、あるいは防火地域または準防火地域と指定のない地域にまたがる場合などは、その建築物全体に対して「制限の厳しいほうの規定」が適用されます。屋根不燃区域の場合も同様です。ただし、制限の緩やかなほうの敷地内に有効な防火壁を設けた場合には、その先の敷地部分に対して厳しいほうの規定は及ばないことになっています。
敷地境界線に対する特則
建築基準法第65条では、「防火地域または準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」と規定されています。これは、隣地境界線から50cm以上離さなければならないとする民法の規定に対する特則とされており、都市部では実際に隣地と隙間なく建てられている例も少なくありません。
ただし、この解釈をめぐって隣地との間でトラブルを生じることもあり、この特則が無制限に受け入れられているわけではないことに注意が必要です。
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