世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

アテネのアクロポリス/ギリシア(4ページ目)

ユネスコの標章は古代ギリシアへの敬意からパルテノン神殿を模してデザインされた。今回はパルテノン神殿をはじめとする人類史上最高の建築物を誇る世界遺産「アテネのアクロポリス」と、ユネスコ標章に込められた想いを追う。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

驚異のギリシア哲学

エレクテイオンのカリアティード柱廊。カリアティードとは柱の役割を果たす女性像で、この柱廊はポーチ(玄関)にもなっている

エレクテイオンのカリアティード柱廊。カリアティードとは柱の役割を果たす女性像で、この柱廊はポーチ(玄関)にもなっている

古代アテネの人々はアクロポリスの麓のアゴラに集まって市民集会を開き、政治や裁判を行い、世界について討論した。その結果はギリシア哲学となって成就し、その精神はいまに引き継がれている。古代ギリシアの驚くべき成果の一端を紹介しよう。

■民主主義
アクロポリス博物館に保管されているカリアティードのオリジナル ©牧哲雄

アクロポリス博物館に保管されているカリアティードのオリジナル ©牧哲雄

18歳以上の男子市民による直接民主制を完成させた。女性に参政権はなかったし奴隷制は維持されたが、民主主義の再生は2千年後、17世紀の市民革命を待つことになる。

■地球球体説と地動説

エラトステネスは紀元前3世紀に地球を球体として地球の周を計測、アリスタルコスは太陽を中心とする地動説を唱えた。両説が公に主張されるのは15~16世紀にトスカネリやコペルニクスが登場してから。

■原子論
紀元前4世紀、レウキッポスとその弟子デモクリトスはアトム(原子)を万物の素と考えた。原子説が一般的になるのは19世紀のドルトン以降。

■機械論、唯物論

ものごとに偶然はなく、小さな物質が規則的な反応を繰り返すことですべての現象を説明できるという考え方。デモクリトスらが主張。科学の基本的な態度。

■唯心論
アナクサゴラスは知性=ヌースを世界の第一原因としたし、プロタゴラスの「万物は人間の尺度」を主張した。これは、脳の働きから生み出される思考・思想が世界のあり方を決めるという唯脳論や、唯識論的な考え方に近い。
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