世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

古代都市テーベ/エジプト(4ページ目)

60以上の墓を収める王家の谷、エジプト建築屈指の美しさを誇るハトシェプスト葬祭殿、エジプト一の規模を誇るカルナック神殿…。古代エジプトの真髄を体現する世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

王妃の谷とネフェルタリの墓

王妃の谷。王妃という言葉はついているものの、実は埋葬されているのは王妃とは限らない ©牧哲雄

王妃の谷。王妃という言葉はついているものの、実は埋葬されているのは王妃とは限らない ©牧哲雄

王妃の谷には王妃や王子の墓が集まっている。しかし、やはり王家の谷と比べると見劣りするのも事実。ただひとつ、ネフェルタリの墓だけはぜひ見てほしい。

ネフェルタリはラムセス2世の妃で、古代エジプトで最高の美女といわれる女性だ。ラムセス2世は彼女のためにアブ・シンベル小神殿を建築し、亡くなった王妃のために美しい墓を造り、壁面に「私が愛したのはただひとり。あなた以上の人はいない」と刻み込んだ。

この墓は1995年に修復されたばかりで、壁画の状態がもっともよく、もっとも美しい墓として知られている。ただし、観光客の湿気が壁画を劣化させるとして、1日の入場者は150人、見学時間も10分に制限され、他の墓の数倍の入場料がかかる。

ハトシェプスト女王葬祭殿

断崖の前にたたずむハトシェプスト女王葬祭殿。背後の裏山の向こうが王家の谷 ©牧哲雄

断崖の前にたたずむハトシェプスト女王葬祭殿。背後の裏山の向こうが王家の谷 ©牧哲雄

紀元前1500年前後に建てられた女王ハトシェプストの葬祭殿で、古代エジプトでもっとも美しい建築物のひとつとして名高い。有名な建築家センムトの設計。

愛と美の女神ハトホルを彫り込んだハトシェプスト女王葬祭殿の柱 ©牧哲雄

愛と美の女神ハトホルを彫り込んだハトシェプスト女王葬祭殿の柱 ©牧哲雄

トトメス2世の死後トトメス3世が王位に就いたが、母であるハトシェプストは息子の王位を取り下げてファラオとなり、男装し、つけ髭をして国を統治したという。そのためハトシェプストに関する壁画はことごとく男として描かれている。ただひとつ、カルナック神殿の倒されたオベリスクの先端に、女として描かれているのを除いて。もしかしたら、誰の目にもつかないオベリスクの頂上にこっそりと描いたのかもしれない。

なお、トトメス3世はふたたび王位に就いた後、ハトシェプストの像をことごとく壁画から削り取った。
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