桑名の国産地蛤と地酒「青雲」のリッチな組み合わせに涙
「その手は桑名の焼き蛤」、「桑名ぁの殿様ぁ~、時雨で茶々漬けぇ~♪」など言葉遊びや騒ぎ唄で知られる三重県桑名市の蛤。食べに行ってきた。贅沢なことに、正真正銘の国産天然地蛤のしゃぶしゃぶだぁ。
大きくて艶がある桑名の地蛤。への字型の殻がホンモノの証拠 |
桑名は、伊勢神宮への玄関口でもあり、木曾三川(木曽川、揖斐川、長良川)の水運力と近隣の穀倉地帯をバックグラウンドにし、古くから地場産業で栄えた商業都市である。
豊かな水源と良質の米、おまけに「御食(みけつ)国」と呼ばれるほど山海の旨いものに恵まれた土地である。名酒があるのは当たり前。
今回の蛤料理に合わせるのは、もうこのお酒しかない、そう、桑名の地酒「青雲」(後藤酒造場)だ。ちなみに発音は「セイ」のほうにアクセントが来る。「ウン」にアクセントを持ってくるとお線香ですからね。
青雲の「特別純米 久波奈」。広重の「東海道五十三次桑名」の絵があしらわれている |
貝が開いた瞬間に鍋から上げる。そこにはみずみずしい身が
そぼ降る雨に濡れる玄関。風情がある「日の出」 |
蛤といえば旬は3月頃かと思っていたけれど、この地蛤は、4月から7月にかけて、特に梅雨の頃が一番美味しいのだとか。夏の8月9月をのぞけばほぼ年中美味しい蛤が食べられるらしい。まさに、これから狙い目ともいえる。
鍋に入れられる前の蛤の大きいこと、艶のいいこと、重いこと・・・・。これはおいしくないわけがない。これをお店の方が絶妙なタイミングでしゃぶしゃぶしてくれる。
ぱかっと開いた貝殻の中には、みずみずしくぷっくりとしっとりと膨らんだ身が・・・。ちゅるっと口に含み、一噛みするとミネラルたっぷりの天然貝の出汁がじゅわ~っと広がる。さらに噛めば噛むほど、旨味と甘味と貝独特の心地いい苦味のようなものが出てくる。むは~、たまらん。
殻が開いたらほぼすぐに出汁から上げられる。ぷくっとつやがある身 |
このみずみずしい旨みに合わせるのは、特別純米の「久波奈」。
歌川広重「東海道五十三次」の「桑名」の絵があしらわれたラベルは落ち着きがある。三重産の山田錦と三重県酵母で仕込んだやわらかい純米酒。
青雲 山廃純米。柔らかい旨みが蛤の旨味と連動する |
しゃぶしゃぶは数回に分けてつくってくれるが、一回目より二回目、二回目より三回目と回を重ねるにつれ、鍋の中が凝縮してくるせいかミネラル風味(塩味)や旨味が強くなってくる。後半には「青雲 山廃純米」をヌル燗に代えよう。あっさりした蛤の旨味が、思いのほかボリュームがあることが実感できる。山廃のコクと合わせるとリッチな印象にかわる。
蛤コースには、このしゃぶしゃぶのほか、地海苔で巻いた蛤を揚げたてんぷら、蛤の出汁を含んだお豆腐や三つ葉などシンプルだけど盛りだくさんなお皿が続く。
別注文で、まるで蒸したようにジューシーな特大蛤(7年から10年くらい)の「焼き蛤」も楽しめる(これは価値ある)。途中で出汁とともに楽しむ「葛」(胡椒をかける!)や最後のお雑炊とうどんも、上品な旨み凝縮で飽きない味であった。地酒と地蛤でお腹一杯って、シアワセだなぁ。
桑名は地海苔も有名。身を海苔で巻いたてんぷら |
蛤出汁たっぷりの豆腐と三つ葉 |