日本酒/酒造、酒蔵訪問

「山形正宗」水戸部酒造を訪ねる(3ページ目)

銘酒ぞろいの山形。なかでもバランスのよさとなめらかさが大好きで日ごろから飲んでいた「山形正宗」の水戸部酒造にうかがった。新社長就任直後の訪問だ。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド

子供のころからのニックネーム「稲造」をラベルに


自家製無農薬の山田錦使用の純米吟醸(3,150円)。
若社長は、原料米にも思い入れがある。ちなみに山形は、山田錦の北限栽培地域なのだとか。厳しい環境をも受け入れながら、無農薬での米造りにトライしている。

米造りを行うには不思議な縁がある。
この若社長、子どものころからのニックネームは「稲造(いなぞう)」。当時の新札にもなった新渡戸稲造の名前が似ていたことでつけられたのだとか。ハハハ、子供にはありがちなあだ名で笑えるなぁと思うが、今、実際に米を造っていることを考えれば、なんだか運命的な感じさえするから不思議だ。

この魅力的な縁を持つ「稲造」の名前を冠した、蔵元自家製で無農薬栽培された山田錦使用の純米吟醸(1800ml 3,150円)を味見させていただいた。

ひょうたんのような赤い地に「稲造」文字の印象的なロゴ。
山田錦らしいしっかりと芯のあるバランスのいい味わい。嫌味のない華やかさが純米吟醸らしく滑らかさや艶もありモダンな造りになっていると思う。
他にも、数種のテイスティングをさせていただいた。

男酒ができる水とおっしゃるが、私にはどうしても、優しい感じの男酒に感じられる。芯はあるけれど、現代風のしなやかな男性といった印象。そう、まさに五代目のような感じかな・・・・。いや、ほんと。
(そういえば、5代目はロックギタリストなのだとか・・・。果たして今後、それがお酒造りに影響を与えるか否かは、ちっと興味あるところ)

稲造の軽やかな旨味が残る余韻を味わいっていると、四代目の経験と五代目の若いエネルギーが重なりあい、山形の名刀、この先ますますキレが冴えわたるような予感がした。



地元米「羽州誉」の純米吟醸。
この19年と17年醸造の2種をきき酒。老ねないので熟成酒に向くといわれる。

実際の味わいは、ハーブのような独特な香りがあり、アフターにやや苦味。熟成の臭みは確かにない。これから先が楽しみな銘柄だ。




シンプルだけど妙にインパクトのあるラベルの純米酒。味わいはやはりなめらかでバランスがいい。安心の味わいだ。お燗もいける。







赤い金箔ラベルは暗い冷蔵庫の中でも目立つ。華やか過ぎない品のある吟醸。冷やでいきたい。





新しく入れた大型冷蔵庫。8機ある。熟成にも力を入れる予定。





お蔵の裏にはりんご畑。





【おまけ】
自ら食いしん坊だとおっしゃる四代目がおもしろいものを取り出してきた。世界でもっとも「臭い」という食べ物、「シュールストレミング」。
スウェーデンの鰊の缶詰だ。

あまりの臭いのすごさに、缶を開けるときは外で・・・とか、飛行機内持ち込みは禁止・・・とか、香りを嗅いで失神者が出た・・・とか、恐ろしいことを言われている缶詰。
は、はじめて見たよ。
こ、こ、ここでは開けないでーっ。

でたー。これがシュールストレミングの缶。


持つのもこわごわ・・・。で、いつ、食べるの?





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