愛山、龍の落とし子・・・酒造好適米の個性は?
さて、顕統氏は、山形の酒米卸会社との共同開発にも力を入れている。十四代のラベルをみるとさまざまな種類の酒米名が記されているのに気がつく人も多いだろう。顕統氏からうかがった、それぞれの酒米の特徴は以下の通り。
- 「愛山」→巾と深みのある味わい深いタイプ
- 「山田錦」→キレがありシャープ。香り高いタイプ。
- 「雄町」→よくとける品種で、優しくてやわらかいタイプ。
- 「龍の落とし子」→若々しく、瑞々しい。
- 「八反錦」→上品で、気品がある。
- 「出羽燦々」→山形産の品種としては、幅があって濃いタイプだけど、全国的に見ればシャープでさわやかなタイプ。
ワインと違って日本酒は品種の違いによる味の個性は見分けにくいのだけど、これだけ揃っていれば、違いを楽しむことも出来るわけだ。(あ、その前に、これだけ揃えて飲み比べは大変だけど・・・)
息子は造りの名人、そのわけは?
辰五郎氏が凝って作った蒸留器。みごとなアランビックスタイルだ。 |
命がけで造った初めてのお酒は、厳しい判断力と日本酒販売に勢いをもつ有力酒販店の後押しと、淡麗辛口に飽きていた日本酒ファンの舌に支えられ、一気に火がつき、人気銘柄になった。その後のことは皆さんのご承知の通り。
40年近く前のものだとか。辰五郎氏、今は、テキーラに興味津々なんだとか。 |
「今、息子は、日本酒界のイチローだとか天才だとか言われているけれど、親が言うのもへんだけど、12回目あたりから、名人といってもいいくらいになったと認めている。そのわけは、発酵の途中でアミノ酸量をコントロールできる技術が身についたから。これはほかの誰もできないことです」
なぜソレができるように?
新しく建てられたカーヴのような建物の中にはシェリー樽が。 |
・・・十四代当主のご意見。
たしかに十五代目は、死ぬ思いの努力をしながら酒造りをしてきた。けれど、味に厳しいプロに認められ、わがままで身勝手な日本酒ファンを満足させ、さらに正真正銘の「プレミアム日本酒」と世間に認識させた技量は、ふむ、これひとえに「センス」とか「バランス感覚の良さ」ではないかと感じる。
イチローも「なんとも、人には説明できないんだけど、自分でこれだっと言う感覚があるんだ」と語っている。きっと、その顕統氏にしかわからない独特な感覚がお酒造りに影響しているのじゃないかと、お目にかかって感じた次第。
海外からわざわざ飲みに来てくれるような日本酒にしたい
現在生産量1700石~1800石。数年後の400周年記念に向けて、蔵の新設と新しい試みを考えているとか。
まるでヨーロッパのワイン蔵のよう。 |
たしかに、ロマネ・コンティやシャトー・マルゴーはフランス現地にまで尋ねたくなるものなぁ。なるほど。
最後に、どんな銘柄を飲みますか?と聞いたら、「外では自分のお酒しか飲まない。え? なぜかって? そりゃ、品質が心配だからです」と真顔で応える。生真面目な一面。でも家ではビールだし、ワインやシャンパンも好きでたまに飲むとか。
「今、おすすめのシャンパンってなに? じゃあ、今度、東京でソレ飲みましょう!」と話す華やかな笑顔の若き名人。箔押しの文字以上に輝く彼自身のオーラが、まぶしい~っ。
おまけ
山形は美味しいもの満載の土地だけど、この高木酒造の近隣は「じゅんさい」の産地なのだとか。あの葉っぱをくるむ透明な部分もぷりっと大きく、新鮮さは抜群とか。6月7月の初夏が最盛期。山盛りの「じゅんさい」をスプーンですくってお酢とお醤油のみで、トゥルトゥルたっぷり食べるじゅんさいパーティーなるものがあるらしい。うわ~、いいなぁ。そのころまた来よう。しかし、じゅんさいなんていうなんとも繊細で、味があるようでないような日本独特の食べ物は、これ、日本酒しか合うお酒はないなぁと思いませんか?