共通言語として必要なオフ・フレーヴァーの表現



集中力がいるテイスティング。だけど嗅ぎすぎてもわからない。難しい。
お酒の香りをかいで、お酢のような匂いがする、黒いバナナのようなツンツンした匂いが気になる、チーズみたいな匂いがする、なぁんていう経験はないだろうか。

お酒の中にあってはいけない香りや匂いを、「オフ・フレーヴァー」と呼ぶが、これらは、いわゆる「オフ・フレーヴァー」の代表選手。

一般のお酒ファンの方にとって、悪い匂いの分析的な判別力はあまり必要ではないかもしれないが、お酒造りのプロや鑑評会などの鑑定士、サービスや販売に携わるお酒のプロたちにとって、この「オフ・フレーヴァー」を判断する力は必要不可欠だし、また業界内での「共通言語」としての意味合いも重要となる。

先日、プロ向けの勉強会で「日本酒のオフ・フレーヴァー」を体験してきた。サイト内の文字だけで実感していただくのは難しいかもしれないが、日本酒ファンの皆さまの美味しい日本酒選びにお役立ていただきたく、体験談とポイントを明記しておこうと思う。

勉強会の主催は、福井県大野市の蔵元、「花垣」銘柄で知られる「南部酒造場」



代表的なオフ・フレーヴァー12種はこれだ。

まず、『日本酒にしばしば現れる12種類の特徴的な香り』が以下の通り。

香りの名称 香りの特徴 香りの生成原因
1)吟醸香<1>(カプロン酸エチルの香り) 柑橘類や青りんご等の果実様の香り。崩れると靴下がムレた様なにおいに変わる。代表的な含み香だが、近年では上立ち香として現れる程、全体的に濃度が高くなってきた。 吟醸酒(高精白米を使用して低温長期のもろみ経過をとった場合)に現れる。近年、カプロン酸高生成酵母が各地で開発され、比較的簡単にこの香りが生成できる様になった。(cf:アルプス、明利、No86=きょうかい1601号・1801号、各県の酵母等)
2)吟醸香<2>(酢酸イソアミルの香り) バナナ様の香り、または洋ナシ様の香り。代表的な上立ち香 吟醸酒(高精白米を使用して低温長期のもろみ経過をとった場合)に現れる。酢酸エチル臭との境界線が微妙で、鑑評会等でしばしば議論になっている。(cf:きょうかい14号+五百万石)
3)老ね香 長期間貯蔵した酒に発生する、焦げて香ばしい様な香り。好印象の場合は熟成香、悪印象の場合は老ね香と表現される場合が多い。 熟成に伴う化学変化による。通常の貯蔵期間でも、老ね麹を使用して粕歩合を少なくし貯蔵温度が高かった場合などによく現れる。(過熟臭とも言われる。)熟成は一種の酸化反応と考えられ酸化臭と呼ぶこともある。
4)ダイアセチル臭(ツワリ香) ムッとする様な、劣化した乳製品(チーズ・ヨーグルト)や痛んだごはんを連想させる独特のにおい。 αアセト乳酸から化学反応で生じる。発酵不良・発酵未熟の場合、また乳酸菌汚染等の場合や火落ちの場合にも発生する。
5)酸臭 酢の様な、酸っぱいにおい。 発酵不良や、もろみの細菌等による汚染。
6)酢酸エチル臭(酢エチ臭) セメダイン様のにおい。(セメダイン臭) 高精白米を使用して若い麹を使用した場合や、逆に低精白米を使用して低温のもろみ経過をとった場合に出やすい。
7)アセトアルデヒド臭(木香様臭) 木香(木の香り)に似ているが、もっと青臭い感じのにおい。 ピルビン酸から酵母体内の酵素が作用して生じる。発酵不良や、発酵途中のもろみを上槽した場合に出易い。
8)生老ね香(ムレ香) 軽くムレた様な(ちょっと香草の様な)におい 常温放置等で劣化した生酒に現れる。イソバレルアルデヒド等に由来。
9)炭素臭(炭臭) 焦げ臭・アセトアルデヒド・酢エチの混じった様なにおい。 活性炭の使い過ぎ。
10)木香 木(杉)の香り 樽等の木製の貯蔵容器・道具から移行する。
11)紙臭 紙(濾紙)のにおい 濾過時に濾紙から移行する。(cf:木綿臭・濾過綿臭)
12)ゴム臭 ゴムのにおい ホース等ゴム製の用具から移行。酒に温度がかかっている場合に出易い。



勉強会主宰の南部酒造場、代表の南部さん。プロとしての共通言語の必要性を語る。
この表をもとに、南部酒造場、製造部醸造課課長代理、佐藤明氏に説明をうかがうと、

●このなかに「~香」と「~臭」というのがあるが、「香」はどちらかといえばいいものを、「臭」はどちらかといえば悪いものをさす。

●「1~8」はお酒自体からでるもの、「9~12」はお酒以外からでるものである。

●(1)の「カプロン酸エチル」のカプロンの語源は、CAPRA=山羊で、脂肪酸のこと。ヘキサン酸エチルとも呼ばれる。

●(3)の「老ね香(ひねこう)」は、基本的には悪い印象の言葉だが、「熟成香」ともいわれ、好印象ととることがある。日本酒には、おおむね3年でピークが来て、一時下がり、また盛り上がる・・・という熟成の流れある。しかし場合によっては、春に造り、秋には「老ねている」ことがある。これは麹のせいだったり、貯蔵温度が高いなどの理由から。この「老ね香」や「熟成香」は判断が難しいと私、友田も感じるところ。

●(6)の「酢酸エチル臭」は、「エステル香」と呼ぶことがある。

●(8)の「生老ね香」は、白鶴酒造が発見したオフ・フレーヴァーであり、ハーブやすっとするようなニュアンスがある。

●この表以外にも、「日光臭」、「カビ臭」、「硫化水素臭」などがある。

・・・ということを教えていただいた。


さて、これらを勉強後、実際にテイスティングしてみることになった。もちろん、ブラインド! どれがどれかを当ててみようということだ。さて、ワタクシ、友田の結果はいかに。

続きは次回の記事「日本酒のオフ・フレーヴァーのきき当て体験、その2」でご紹介。乞うご期待。


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