ご覧になった方も多いと思うが、昨年末、日経新聞の土曜版NIKKEIプラス1『何でもランキング』において、“おせち料理によく合ってお燗にすると美味しい日本酒”の第一位に大七酒造「純米生もと」が選ばれた記事が掲載された。この記事で純米生もとが売れに売れたらしい。
たしかに、生もと造りから来るしっかりとした酒質は、バラエティーに富んだおせちにはぴったりマッチすると思うし、お燗にすると酸味とうま味が際立ち、お燗好きの舌を完全に魅了できるアイテムだ。ランキング1位になるのもうなずけるというもの。

さらに、じわじわ日本酒ブームの波が押し寄せている欧米でも、大七の人気は目に見えるほどで、「妙花闌曲」など高額アイテムもバカバカ開けられているのだとか。

この大七人気の秘密は、いったどこにあるのだろう。
新しくなった蔵とともに、一度お尋ねしないといけないと思っていた矢先、チャンスは訪れた。


レンガ色の建物はフランスのシャトーかイギリスの大学のようなたたずまいだ。(=左)/蔵の3階から臨む安達太良山。3月のこの日、山頂は雲に覆われていた。(=右)

まるでシャトーのようなたたずまいの新社屋


社内受付を入ると商品のディスプレーが迎えてくれる。
東の阿武隈山地、西の安達太良山を見渡せる二本松駅北側にある『大七酒造』の蔵を訪れたのは、まだ雪がたっぷりと残る2月上旬とほんの少し春の訪れを感じる3月の上旬の2回。どちらの回も悠然とたたずむシャトーのごとき新社屋に驚かされた。こ、これが日本酒の蔵?! 天井のたか~い3階建てで、数年もすれば蔦の絡まる洋館に変身するであろう美しい建物だ。

この新しい蔵は3年以上の月日をかけ、しっかりゆっくり建て替えられたのだとか。ゴージャスで美しい造りだからという理由のほか、大切な蔵つき酵母や生もとの元になる微生物たちを、昔の蔵からこの新しい蔵に引越しさせなければいけないという理由からだ。酒蔵の建て替えというのは想像以上に大変なものなのだ。

寛永年間(1624-1643)に伊勢国より三人兄弟で二本松に来住して以来、10代目となる現当主太田英晴さんの丁寧なご案内で、蔵の中を見せていただいた。



蔵の入り口で迎えてくれるのはステンドグラス。昔の酒造りのデザインだ。


昔ながらの蒸し米機。大釜を使い微妙な火加減をしながら最良の状態で蒸しあげる。
これが今はもう替えがきかないという大釜。これで一気に蒸しあげることによって、状態のいい蒸し米が出来上がる。とくに麹米にある米は、「表面が乾き、中に湿気があるもの」が最良といわれる。その状態をうまく作り上げるのは、この釜でなければできないのだとか。今は修理をしつつ大切に使われているのだ。


麹室。全壁、天井すべて杉の木。湿度調整は天然の木が一番なのだ。(=左)/出来上がった麹。タイミングが重要。重労働だ。(=右)


ここが大七人気の源「生もと」が生まれる酒母室。タンクの中に生きた酒母が。手前の白い布がかかっている背の低いステンレス桶で生もとが造られる。