「~saba~ 金華サバの融解温度、黒オリーブ、トマトと黒糖」
その後、温かいお皿に盛りつけ、予熱の力で火を通すのです。表面を焼き固めることなく、慎重に脂肪の融解温度を狙った料理と言えます。ナイフを入れると、焼いた魚とは思えないほどの鮮やかな断面がお目見え。火はたしかに入っているのですが、命を奪われたサバにはまるで見えないのです。しっとりとした身質と、そこから感じられる旨み、香りには、ただただ言葉をなくします。
黒オリーブのソースや、黒糖&トマトのピュレ、さらにはこの料理と合わせるセミドライトマト&カカオのパンが、微妙に異なる濃密な酸味を補ってくれているので、サバのおいしさは極限まで上昇していますね。カカオのビター感も、動物性の脂と好相性。
「~foie gras au naturel~ フォワグラナチュール、サブレとヨーグルト」
真空にし、46.7℃のスチームコンベクションで焼き上げたあと(30分以内)、氷水で急冷蔵するのですが、そうして完成したフォワグラは、まず触感が非常に独特。プディングのようなプリッと感を一瞬感じたかと思うと、その後はゆっくりと喉の奥へ。脂の嫌な部分は微塵も感じず、凝縮された旨みだけが味雷を支配するのです。余韻の中でもその旨みは心地よく膨らむのですが、何でこんなにも後口がキレイなのでしょうか。ちょっと信じ難いおいしさですね。
キャラメル風味のパリパリサブレが軽快な香ばしさを与え、ヨーグルトソースが透明感ある酸味を。白ワインヴィネガーとノイリー(白ワイン)を煮詰めたソースをつければ、濃密でキレのある酸味がプラスされます。
フォワグラのナチュラルなテイストを堪能した後は、ともに供されるヴァニラ、シナモン、ホワイトペッパー、アプリコットのパンを時間差でパクリ。そうすることで、ナチュラルなフォワグラに複雑味が加わり、全く違った表情に。
どの料理もそうなのですが、パンによって料理の印象が明らかに強まっていますよね。こんなにも料理とパンが密接にリンクしているお店は、他にないと断言できます!