龍児の世界 ~ Reminiscing」というblogを書いていらっしゃいます。
実はゴトウは2002年にシドニーのゲイゲームズの取材に行った際、龍児さんたちにお会いしています。オランダで結婚したというお話がとても素敵で、龍児さんの人柄の魅力もとても印象的でした。住んでるのは遠く離れた国ですが、グローバルネットワークと言いますか、世界各地に仲間がいるという喜びを感じました。
龍児さんは4月にパートナーのジャックさんとともに来日していたので、もしお時間あれば…ということでインタビューをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。たまたまアイスランドの噴火の影響で帰国が延びていたそうです(予定が狂ってしまい、大変だったそうです…)
もう20年もおつきあいされている龍児さんとジャックさんは、今でも本当に「おしどり夫婦」な雰囲気を醸し出していて、とても幸せそうでした。ジャックさんとは簡単な英語でしか会話できないのですが、それでも「このシャツ、ユニクロで買ったんだよ」とか話しかけてくださったりして、本当にかわいらしい方でした。
そんなお二人のロマンス、パートナーシップ、そして結婚のお話をお聞きするとともに、世界で最も早く同性婚が認められたオランダという国と日本のゲイシーンを両方見て来た龍児さんに、日本で同性婚が実現するためのヒントとなるようなことを聞いてみようと思いました。龍児さんの通訳で、ジャックさんのコメントもご紹介させていただきました。
龍児さんとジャックさん。来日中に新宿でインタビューさせていただきました。 |
オランダのゲイ・パワー
–– 龍児さんは89年まで日本にいらしたわけですが、それまでのゲイライフはどんな感じでした? ゲイムーブメントもまだ活発でない時期でしたし、二丁目で飲んでて、周りにはカミングアウトせず、みんなと同じような感じ?
龍児:そうですね。ふつうに二丁目に出て来て友達と飲んだり。特に何か活動をやってたわけではないですね。
–– 89年からもう20年以上オランダに住んでいるわけですが、そもそも龍児さんはなぜオランダに?
龍児:仕事の関係で。派遣というか、出向の形で行きました。オランダは偶然で。いくつか候補地があった中の1つです。
–– 言葉も難しい見知らぬ土地に行く不安などはありませんでしたか?
龍児:もともと海外で暮らしたいという気持ちがあって、やっと希望が叶ってうれしかった。喜んで行きました。
–– オランダは一言で言うとどんな国だと思いますか?
龍児:自由で寛容な国。最近情勢が変わってきたりしてますが、それでもアジアの国に比べると、自由だし、いろんなことに寛容。開けている。そういうところではパイオニア的な国ですね。
–– 2002年にシドニーで開催されたゲイゲームズに行った際、オランダのゲイの選手団がすごくたくさん来てて、みんなオレンジ色の王冠みたいなかぶりものをしてて、目立っていました。オランダのコミュニティのパワーを感じました。
龍児:「他の国より多いや」って僕らもびっくりしたくらい。ジャック:小さい国ですが、ゲイ・スポーツの団体がいくつもあって、まとまって行ったんです。
––「ユーロゲームズ」みたいなプチ・オリンピックも行われてるんですよね?
ジャック:「ユーロゲームズ」は年に1回。ヨーロッパの国々の中で持ち回りで開催。とても盛んです。
–– アムステルダムのパレードとかも他の国とちがって運河の上をボートで進んでいったりして、面白いですね。オランダのゲイシーンと日本の違いって何だと思いますか?
龍児:アムステルダムは小さいけれど、その小さい街の中にたくさんゲイの施設がある。ここはレザーストリート、ここはトレンディなストリート、とかはあるけど、雑多な感じです。東京は街が大きいので、二丁目だけでなく新橋にも渋谷にもあって、ここはどういう街って分かれてて。ひとつにまとめるのが難しいのかな。
–– 人口は少ないけど、やってる活動は華やかで、とてもパワーがありますよね。
龍児:長い歴史がありますから。ゲイ活動の元になってるCOCっていう団体があって。
ジャック:1940年代から活動している世界最古のゲイ団体です。Cはカルチャー、Oはオントムーティング(ミーティング)、もう1つのCはセンターの頭文字で、文化交流センターっていう意味なんです。ゲイがアンダーグラウンドだった(禁止されてた)時代、それでも集まってダンスしたりとか、交流を持ったりとか、そういう場として始まったんです。時代とともに活動内容は変わっていきますが、今もCOCという名前です。
–– ものすごく古くから…歴史の長さが違いますね。
ジャック:オランダと日本の違いで言うと、日本はほとんど日本人ばかりですが、アムステルダムはいろんな民族が入り交じっている。みんな他の国から来て、グループを作って、それが大きくなっていく。
–– なるほど。とても先進的なイメージのオランダですが、実はバッシングもあるんですよね…blogで不良グループみたいな子たちに追いかけられたという話を読みました。
龍児:あれは厳密に言うと、オランダではなく、ベルギーの話。ムスリム(イスラム教徒)の子どもたちに鉄パイプを投げられ、追いかけられた。でも、同じようなことがオランダでもあって、「ムスリムvsゲイ」みたいな構図になってる。アムステルダム市内でも、モロッコ系の若者がゲイツーリストを殴ったという事件がありました。そういうことを考えると、自由と寛容の国とは言いがたくなってきた。
–– そこは新たな課題なんですね。