セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイライフ

愛は鉄格子を越えて~史上最驚の「純愛」(2ページ目)

愛する彼のために詐欺や脱獄を繰り返す世にも稀な実在のゲイを描いた映画『フィリップ、きみを愛してる!』が3/13から公開。ある意味、史上最驚の「純愛」です。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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愛する人のために詐欺や脱獄さえも…


フィリップ、きみを愛してる!
 
スティーブン(ジム・キャリー)はもともと養子で、実の母を見つけて「どうして僕を捨てたの?」と尋ねるために警察官になり、幸せな家庭の父親像を演じながら生きています。どこにでもいるマッチョで優秀な警官&父親です。しかし、事故で死ぬほどの大ケガをした瞬間、「これからは好きなことをして生きてやる!」と叫び、妻と娘を捨てて、フロリダでゴージャスなゲイとして生きはじめます。「ゲイであることはとてもエクスペンシブ(お金がかかる)」で、貯金も尽きてしまったスティーブンは、天才的な頭脳を使って詐欺に手を染め、それがバレて投獄されるのです。

乱暴者ばかりが集まり、ケンカがたえない監獄の中で、一人、おとなしく本を読んでいるフィリップ(ユアン・マクレガー)に、スティーブンはひとめぼれします。フィリップはエイズに感染した友達がまともな治療を受けられるように、図書室で調べ物をしていたのです。スティーブンは本気の恋に落ち、裏で手を回して彼と同室になることに成功し、ラブラブな時間を過ごします。先に出所したスティーブンは、弁護士のふりをして愛するフィリップを釈放させることに成功し、夢のような暮らしがはじまります。しかし、それも長くは続きませんでした。フィリップに愛想を尽かされたスティーブンは、最後に「フィリップ、きみを愛してる!」と言うためだけに、決死の覚悟で大脱走を図るのです…

フィリップ、きみを愛してる!
 
とても実話だなんて信じられない、ジェットコースターのようなストーリー展開ですが、一方で、これは、まぎれもなくゲイの「純愛」を描いた作品です。ジム・キャリー&ユアン・マクレガーという有名俳優がゲイカップルを演じていることでも話題です。

ジム・キャリー主演というだけあって、基本的にコメディタッチなのですが、せつなくて泣けるシーンもあります…ただ、さすがに詐欺師の映画だけあって、いつどこでどんでん返しが待っているか…油断は禁物です(たぶん「最低!」と、フィリップといっしょに怒りたくなります)

スティーブンはウソで自分の人生を塗り固め、最愛の人さえも詐欺で生んだお金で満足させようとするようなペテン師です。本当の自分などどこにもいない、かわいそうな人…それはそうなのですが、タマネギの皮を剥くように1つ1つウソや見栄をはぎ取っていって、最後にたった1つ残ったものが、フィリップへの愛です(まるでそれは「パンドラの匣」の底に残っていたもの…希望です)。そこにはウソもいつわりもありません。これを「純愛」と言わずして何と言うのでしょうか。

「自分が親に捨てられた子だと知ったときから、人を信用できなくなった」というスティーブンの不幸な生い立ち、保守的なテキサスで、ゲイであることを隠し、自分も周囲も欺き続けたこと…そうした社会環境と詐欺をはたらくようになったことは、決して無関係ではないでしょう。そう思うと、ちょっとだけスティーブンが気の毒に思えてきます。

フィリップ、きみを愛してる!
ジム・キャリーの右隣が本物のフィリップ・モリスさん。弁護士役でカメオ出演しています。
アメリカのゲイ雑誌『Advocate』の記事によると、実在のフィリップ・モリス(偶然にもタバコの銘柄と同じ名前!)は、スティーブンと過ごした時間を「夢のようだった」と語り、「(まだテキサスの刑務所に収監されている)スティーブンがもし出所したら、たぶんいっしょになると思う」と語っています。(これぞ「オトメ」の極み…わかるわぁ、そのキモチ)

実在のスティーブンの刑期は100年以上だそうですが、もしまじめに服役して模範囚として早く出て来れたら、フィリップと感動の再会が待っているのです(まるで『幸福の黄色いハンカチ』のように)。そういう意味で、『フィリップ、きみを愛してる!』は、まだ完結していないリアル・ストーリーなのです。
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