世界遺産/インドの世界遺産

タージマハル/インド(2ページ目)

「世界の王」シャー・ジャハーンが亡き妻ムムターズ・マハルに贈った純白の廟タージマハル。完璧なシンメトリーと白大理石が美しいインドの世界遺産タージマハルの魅力と、それにまつわる恋の物語を紹介する。

長谷川 大

長谷川 大

世界遺産 ガイド

得意ジャンルは世界遺産・世界史・海外情勢・海外旅行・哲学・芸術等。世界遺産マイスター、世界遺産検定1級文部科学大臣賞受賞。出版社で編集者として勤務したのち世界一周の旅に出る。現在は東南アジアを拠点に海外旅行を継続しながらフリーの編集者・ライターとして活動。訪問国数は約100、世界遺産は約250に及ぶ。

...続きを読む

タージマハルのふたつの見所、シンメトリーとアラベスク

夏、周囲の石が焼けるほどの日差しのなか、タージマハルの大理石部分はひんやり冷たいほど。非常に純度の高い白大理石がふんだんに使用されている

夏、周囲の石が焼けるほどの日差しのなか、タージマハルの大理石部分はひんやり冷たいほど。非常に純度の高い白大理石がふんだんに使用されている

南門を抜けると正門で、正門の向こうにタージマハルが現れる。感動の瞬間

南門を抜けると正門で、正門の向こうにタージマハルが現れる。感動の瞬間

タージマハルの南門を入り、正門を抜けると、タージマハルが姿を現す。完璧なシンメトリー(対称性)と、大理石による純白がとにかく美しい。左右対称であるだけでなく、天国の川を模したといわれる4つの水路にタージマハルが映り、天地対称にもなっている。

基壇には4つのミナレットがそびえ立ち、廟に安定感を与えている。タージマハルを見上げると、廟の周囲がアラベスクで彩られているのがわかる。アラベスクとはイスラムの装飾文様のこと。イスラム教では偶像崇拝が禁じられているため、人や動物の絵がほとんどない代わりに、文字や幾何学図形や植物の装飾が発達した。

廟の中は墓室になっていて、セノタフと呼ばれる棺をかたどった墓碑がふたつある。中央にあるのがムムターズ・マハルで、大きい方がシャー・ジャハーンのもの。本物の墓は地下の玄室にある。

 

タージマハルは夜景もまた美しい

タージマハルは夜景もまた美しい

タージマハルの真髄は墓室の中にある。植物の文様をよく見てみよう。植物らしい優雅な曲線や花びらの絶妙なグラデーションがとんでもなく美しい。大理石と同じように表面はとても艶やかで、くすみはいっさいなくて、恐ろしいほどにシャープ。光を含んで線香花火のように、やさしく、はぜるように輝いている。

それもそのはず、はめ込まれた一つひとつの石が、水晶、めのう、サンゴ、碧玉、琥珀、るり、カーネリアン、ダイヤモンドといった宝石だ。きわめて精緻な象嵌細工で、宝石の色や濃淡を計算し、植物の形に削り込み、同時にピッタリ合うように大理石を彫って、一つひとつはめ込まれている。本物は本物でしか語れない。タージマハルのアラベスクは、花の美しさを宝石の美しさで代弁する。 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます