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日本語を勉強中[1]…力士の体はやわらかい(3ページ目)

外国語勉強中の会話に間違いは付きもの。それを恐れていたら上達はできません。また、まわりの人も無下に笑ってはいけません。しかし、思わず吹き出してしまう、こんな勘違いも……

執筆者:シャウウェッカー 光代

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「やわらかい湊富士」

アンコ型の力士は体が「やわらかい」?
相撲が大好きな夫は、カナダのテレビジャパン(NHKの番組を中心とした日本語の国際放送)で、大相撲中継を毎場所欠かさず見ていました。いちばん好きな力士は当時最盛期だった貴乃花、次に好きな力士は「たくさんい過ぎて言えない」ほど……。

場所前の番付発表の頃から、遠足前の子どものように興奮し始め、場所中は毎日うるさいうるさい。◯◯が勝ったーとか、△△が負けたーとか、別に知りたくないのに、毎日報告されてしまうのです。おかげでその頃の力士の名は、そう有名でない人でも覚えてしまいました。

当時、湊富士(みなとふじ)という力士がいました。いわゆるアンコ型の力士です。ウィキペディアによると、アンコ型とは「肉付きが良く下腹部に締まりのない体型をした力士を指す相撲用語。和菓子の『餡子』ではなく、魚の『アンコウ』のような体型に喩えた言葉である」とあります。

(逆に、痩せ型や筋肉質の力士のことを「ソップ型」といいますが、同サイトによると、「『そっぷ』とは本来オランダ語"sob"、つまり『スープ』の事であり、ダシを取った後の鶏ガラに例えてこう呼ぶ」のだそうです。)

この湊富士、体がやわらかいことで知られていました。アナウンサーが解説する時、必ず「やわらかい湊富士」と呼ぶのです。まるで枕詞のように……。

夫はこの呼び方がいたく気に入っており、彼が出てくると「やわらかい湊富士です」(←です・ます調で話している)と言っては、1人で喜んでいました。それで、私もすっかりそのフレーズがインプットされてしまったのですが……

ある場所で、琴龍という力士との取り組みが始まったときのこと。夫によると、琴龍はお腹の丸みがいちばんきれいな形をしている力士なのだそうです。たしかにボールのように丸くに突き出ていて、且つ、よく締まっている体つきです。

うれしそうに観戦しながら、夫はまた1人でブツブツつぶやいていました。
「琴龍のお腹は硬いです。湊富士のお腹はやわらかいです」

何気なく聞き流そうとした私の意識が、何かに引っかかりました。
「ん? 何?? お腹がやわらかいって!?」

そうなのです。そこで初めて気がつきました。我々日本人ならば、力士に対して「やわらかい」と言えば、身体の柔軟性を示しているということが、暗黙のうちに分かるのですが、彼は湊富士の体つきや見た目の感じから、“ソフト”なほうのやわらかいだと思っていたのです!

夫があんなに「やわらかい湊富士」というフレーズを気に入っていたのは、アナウンサーが「(お腹がポニョポニョで)やわらかい湊富士」と言っていると思っていたからなのでした♪ たしかに、NHKのアナウンサーがまじめな顔で「お腹がやわらかい湊富士」なんて言っていたら、ウケますよね。

この一件で、その“やわらかそうな”姿が、すっかり私の脳裏に焼き付いてしまった湊富士。調べてみたら、同じ群馬の出身でした。現在は引退され、大相撲の解説を務められているそうですよ。

そうそう、このようにブツブツ独り言を言うのも、語学上達の秘訣かもしれません。


■次回は2人でジョギング中のエピソードです。お楽しみに!

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