秋を彩る彼岸花、「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」とは?
彼岸花といってもピンとこないけれど、曼殊沙華といえばわかる方も多いでしょう。そのほかにもたくさんの別名、しかも「死人花」「幽霊花」など、ちょっと不気味な呼び名があるのには理由があります。またその姿から、「子どもの頃、彼岸花を見ると足がすくむほど怖かった」「何だか不気味」という人もいれば、「あの妖艶さが好き」「この花を見ると癒される」という人もいます。いずれにしても、妖しい雰囲気が漂う彼岸花。その秘密に迫ってみました。
<目次>
彼岸花・曼殊沙華とは? 花言葉と基本データ
埼玉県日高市の「巾着田(きんちゃくだ)」は曼珠沙華の里として有名。今年もお彼岸の頃に見頃を迎えます。詳しくはひだか巾着田HPをご覧ください。<写真:橋本かおる>
ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草で、田んぼの畦道などに群生し、9月中旬に赤い花をつけるため、秋のお彼岸の頃に咲く花として親しまれています。通常とは逆のサイクルで生長する不思議な花です。
彼岸花の別名「曼珠沙華」:サンスクリット語で「天界に咲く花」
彼岸花の別名「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」は、サンスクリット語で天界に咲く花という意味。おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典から来ています。サンスクリット語ではmanjusakaと書きます。彼岸花の曼殊沙華以外の別名
「死人花」「幽霊花」「地獄花」:お彼岸頃に咲くから
開花期間が1週間ほどなのに、秋の彼岸と時を同じくするかのように開花する彼岸花は、あの世とこの世が最も通じやすい時期に咲く花でもあります。お彼岸に咲き、土葬をモグラや野ネズミなどから守るため、墓地などによく植えられていることから、「死人花(しびとばな)」「幽霊花(ゆうれいばな)」「地獄花(じごくばな)」のようなちょっと怖い呼び名もついています。
彼岸花の曼殊沙華以外の別名
「毒花」「痺れ花」:毒があることから
彼岸花にはアルカロイドという毒があるため、「毒花(どくばな)」「痺れ花(しびればな)」などと呼ばれています。その反面、でんぷんを多く含んでいるため食用可能で、毒は水にさらすと抜けるため、昔は飢餓に苦しい時に毒を抜いて食用にすることもあったそうです。田んぼの畦道に彼岸花が多いのは、その毒でモグラや野ネズミを防除するためだけではなく、飢饉に備えて植えたという説もあり、危険を覚悟してまで口にしなければならなかった昔の苦労がしのばれます。
彼岸花の曼殊沙華以外の別名
「天蓋花」「狐の松明」「葉見ず花見ず」:花の姿から
彼岸花の別名はその花の様子から、「天蓋花(てんがいばな)」「狐の松明(きつねのたいまつ)」「狐のかんざし」「剃刀花(かみそりばな)」など、全国にはたくさんの呼び名があります(天蓋とは、祭壇の上などの装飾用のおおいのこと)。また、花のある時期には葉がなく、葉のある時期には花がないという特徴から、「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」と呼ばれています。呼び名だけでもかなり妖しい雰囲気が漂いますが、その生長ぶりがさらにアヤシイ。まるで生長サイクルが逆ですね。
彼岸花・曼殊沙華には葉がない
彼岸花には、すーっと伸びた茎に鮮やかな花だけがついていて、葉っぱがまったく見あたりません。これも妖しく見える原因のひとつですが、実は、花が終わってから葉が出てくるのです。しかも、普通の植物とは逆のサイクルで!彼岸花・曼殊沙華の生長サイクルは、普通の植物と逆
【 秋に急成長・開花 】彼岸花は、秋雨が降ってやがてお彼岸という頃になると芽を出し、1日に10cm近くも茎が伸びて、瞬く間に50cm位になり、あの真っ赤な花を咲かせます。そして1週間ほどで花も茎も枯れてしまい、今度は球根から緑の葉っぱがすくすくと伸びてきます。
【 冬に葉を茂らせる 】
冬になって周りの植物が枯れても、たわわにしげった葉っぱのままで冬を越します。
【 春に光合成 】
せっせと光合成をして球根に栄養をため込みます。
【 夏に枯れる 】
夏を迎える頃には、葉を枯らして休眠期に入ってしまいます。
【 再び秋に開花 】
やがて秋雨をたっぷり含んでから、急ピッチで姿をあらわして、再び花を咲かせます。 まるで普通の草花とサイクルが逆で面白いですね。彼岸花には、鮮やかな赤だけでなく白や黄色いものもありますが、いずれも根に毒をもっているので注意してください。
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