紅葉狩り(もみじがり)とは
紅葉狩りとは、紅葉(こうよう)を見物する秋の行楽です。秋が深まり野山が赤や黄色で彩られると、その美しさに誘われて、紅葉狩りに出かけたくなるでしょう。そこで今回は、紅葉狩りに関する素朴な疑問を解決します。
<目次>
紅葉(こうよう)って日本だけなんですか?
いいえ、他の国でも紅葉が見られます。でも、日本の紅葉は格別なのです。世界の国々の中でも、とりわけ日本の紅葉が美しいといわれているのは、日本の気候風土のなせる技! そもそも、紅葉が見られるのは落葉樹と呼ばれる種類の木だけですが、世界の国々でも落葉樹林がまとまっているのは、東アジアの沿岸部と北アメリカ大陸の東部、ヨーロッパの一部にすぎません。
地球の3割ほどが森林ですが、一番面積が広いのはロシア・アラスカ・カナダなどに広がる針葉樹林。次に広いのはジャングルなどの熱帯雨林。日本は国土のおよそ3分の2が森林で、様々な落葉樹が生えており、寒暖の差も結構あるため、いたるところで美しい紅葉を楽しむことができるのです。
「紅葉狩り」ってモミジの木を探しに行くの?
いいえ、モミジの木だけではありません。モミジといえば赤く色づいた手の平のような葉を思い浮かべますが、これは「イロハカエデ」というカエデ属の植物のこと。意外にもモミジ属は存在せず、「イロハモミジ」「ヤマモミジ」「オオモミジ」など何々モミジと呼ばれている木は全てムクロジ科カエデ属の植物です。こうしたカエデ属の紅葉(こうよう)が特に見事なので、カエデ属の植物を「モミジ」と呼ぶことが多いです。
そのほかにも、サクラ、ケヤキ、ハゼ、イチョウなど赤や黄色に色づく樹木はたくさんあります。そこで秋に紅葉・黄葉する植物全般をさして広く「モミジ」と表現し、「紅葉狩り」というわけです。
もともと「モミジ」とは、染料をぎゅっと揉んで染色するという意味の「もみづ(揉出)」という言葉を語源とし、木々の葉が色づく様子を示す動詞だったそうで、「紅葉」と書いて「もみじ」と読むようになりました。
【豆知識:カエデの由来】
「カエデ」とは蛙の手に似ていることから「蛙手」が訛ったものでして、「イロハカエデ」というのは7つに分かれている葉っぱがイロハニホヘトと数えられることに由来します。このイロハカエデの紅葉が特に美しいことから、いつしか「モミジ」の代名詞として親しまれるようになったのです。
どうして赤や黄色に紅葉するの?
あれは落葉樹が冬支度をしている姿。冬に葉を落とすために、水分などの供給をストップすると、綺麗な色に染まります。紅葉のしくみを知るとそのメカニズムがよくわかります。普通、光合成によってできたデンプンが糖分に変わって葉から枝へと流れていくのですが、秋になって気温が下がりだすと、その動きが鈍くなり、葉と枝の間に離層という組織が作られて、糖分や水分を運べなくしてしまいます。
すると、葉緑素が壊れてしまうため、今まで見えなかったカロチノイドという黄色い色素が浮き出て見えます。これが、黄色く色づくイチョウ等の黄葉(こうよう) です。また、葉の中に残った糖分によってアントシアンという赤い色素ができていると、赤が目立ってくるので、カエデのような赤い紅葉(こうよう) になるのです。樹木によって色が違うのは、葉の持っている栄養素が違うからです。
なぜ、紅葉の良し悪しがあるの?
日中の天気、昼と夜の寒暖の差、水分。この3要素が関係しているからです。日中の天気がいいほど赤い色素となる糖分が活発に作られますが、夜の気温が高いと、昼間作った糖分を使って活動してしまうため、鮮やかな赤になりません。ですから、昼間は日光が強くて夜になると冷え込む陽気だと、鮮やかな紅葉になるわけです。
また、乾燥しすぎて葉が紅葉する前に枯れてしまっては仕方がないので、適度な雨や水分も必要です。紅葉の名所に渓谷や川沿いが多いのは、日当たり・夜の冷え込み・水分という3つの条件が揃っているからなんですね。よく、今年は色づきがいいとか悪いとか言いますが、同じ場所なのに毎年色の具合が違うのはこのためです。
ちなみに、明け方の最低気温が6度~7度位になると紅葉が始まり、およそ20日~25日後に見頃を迎えます。こうした条件と照らし合わせながら、紅葉をチェックしてみるのも楽しいでしょう。
紅葉を狩ると言うのはなぜ?起源・由来
いいえ。「ぶどう狩り」や「きのこ狩り」と違い、観賞するもの。紅葉見物に出かけることですから、枝葉を採取してはいけません。紅葉狩りの「狩り」は、もともと獣を捕まえるという意味でつかわれていましたが、やがて小動物や鳥を捕まえる意味に広がり、果物などを採る意味にも使われるようになりました。さらに、草花を鑑賞するという意味にも使われ、「紅葉狩り」と呼ぶようになりました。
もともと平安時代の貴族の間で始まり、紅葉を見物しながら宴を開き、その美しさを和歌に詠んで勝負する「紅葉合」が流行したそうです。その後、江戸時代から庶民にも広がり、季節行事として定着していったのです。
春の花見「桜狩り」に対し、秋の「紅葉狩り」というのは、日本人の心を動かす自然の饗宴といえるでしょう。
紅葉って鬼なんですか!?
はい。「紅葉」という名の鬼女が、人の心を惑わせます。それは戸隠山に残るこんな伝説から来ています……『戸隠山に「紅葉」という鬼女が住んでいました。山を降りては村の人々を餌食にするため、時の帝が平維茂(たいらのこれもち)に鬼退治を命じます。維茂が戸隠山に向かうと、美しい女たちが紅葉の下で宴を催していました。維茂は女に誘われるがまま酒宴に加わり、いつしか深い眠りに落ちてしまいます。この女たちこそ鬼女・紅葉とその手下。罠にはまった維茂を前に、鬼女が本性を現したとたん、維茂の夢の中に神が現れ、お告げとともに神剣を与えます。危機一髪のところで目を覚ました維茂は、神剣によって鬼女を退治し、戸隠山に平穏な日々が戻りました。』
鬼女・紅葉を狩るから「紅葉狩り」という説もあるそうで、紅葉の魅惑的な美しさを象徴しています。また、このお話は『紅葉狩』という能の謡曲としても有名です。
■戸隠観光協会:鬼女紅葉祭り
……「紅葉狩」の舞台となった戸隠山(長野県長野市)のお祭り。10月の第3または第4日曜日に開催されます
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