水琴窟って何?
水琴窟をご存知ですか?
水琴窟とは、その名の通り水の窟、つまり水瓶(みずがめ)の底に小さな穴を開け、この瓶を逆さにして土の中に埋めたもので、ここに水を流すと、穴から落ちる水滴の音が瓶の中で反響し、琴の音色のように聞こえてきます。
この音色は、瓶の材質や大きさ、形、瓶の周囲の土や砂利の組み方によって変わり、水滴の量によって生まれる音も微妙に違うため、その揺らぎになんともいえない心地良さがあります。
<目次>
水琴窟の歴史:音色のルーツが排水だったなんて!
蹲踞(つくばい)から流れた水が手前の穴に落ちて…♪ 水琴窟は日本の貴重な音文化のひとつ。ファンも多いのです
水琴窟のルーツは蹲踞(つくばい)という手洗い場の排水設備。手を洗った排水を素早く土中に排出するためのもので、江戸時代初期、著名な茶人であり庭園作家でもある小堀遠州が考案したといわれています。当初は「洞水門(とうすいもん)」と呼ばれていました。
それがなかなかいい音を出すことがわかり、庭師によって改良が重ねられていきます。やがて、江戸時代中期にその構造が確立すると、いつしか「水琴窟」と呼ばれるようになり、“庭の片隅の目立たない脇役”から“庭園の名脇役”へと発展していったのです。単に排水するだけではなく、その水の響きに風情を見出すとは、なんとも風流!
その後、江戸後期に一旦廃れ、明治時代に再興したものの、昭和初期にはほとんど忘れられた存在となりますが、昭和57年に朝日新聞で紹介されたのを機に、再び注目されるようになりました。
水琴窟の音の仕組み:二種類の水滴が奏でるハーモニー
手前の竹って何するの?…耳をあててみて!聴こえますか?
水琴窟の音は水琴音と呼ばれ、瓶の中で水滴が反響することで音を奏でます。
この音はさらに流水音と水滴音の二つに分けられます。水琴窟の本来の設置場所は手を洗う場所(例えば、伝統的な日本家屋の庭にある、石でできた蹲踞と柄杓があるところなど)。手を洗っている最中、流れた水が小石や瓶の縁を伝って流水音となり、瓶の内側の水滴音とハーモニーが生まれます。やがて手を洗い終えると、流水音が止み、静かな水滴音だけが響きます。
一滴一滴がクリアな音色を生み、重なり合う美しい調べ……。水琴窟の音色は、瓶の大きさや形状、底の水の溜まり具合、周囲の様子など、様々な条件によって変化しますので、ひとつとして同じ音の水琴窟はありません。
水琴窟の音色の聴き方:いったい、どうやって聴くの?
一般的に、地中に瓶を設置してある水琴窟の場合、耳を澄ませていれば地中から響く音色が聞こえますが、竹の筒を耳にあてて聴くものもあります。瓶が地上に置いてあるような場合も同様です。
そんなに大きな音ではないため、気持ちを集中しないと聴こえません。目を閉じて耳を傾ければ、さらにマル。心にまで響くことでしょう。
水琴窟リスト:意外や意外。全国に名所が
昔ながらの水琴窟はお寺や茶室のある庭園などに多いのですが、旅館・公園・個人のお庭など、水琴窟を構えるところも増えています。また、年月を経て、お家の方すらその存在に気づかないものも多いそう。もしかしたら、ご近所のお庭に昔ながらの水琴窟が残っているかもしれません。
■日本水琴窟フォーラム……水琴窟について広く深い情報を提供しています。「水琴窟の音」も聴け、「全国水琴窟データベース」もあります。
しばし足をとめ、耳を傾けながら聴く水の音……静寂の中に広がる澄んだ音色が心にまで響きます。機会があれば是非聴いてみてください。
また、素朴な音色に癒しを感じる方も多く、水琴音のCDや、家の中でも楽しめるインテリア型水琴窟も人気があります。