裏路地にたたずむ居酒屋

街で「カキフライはじめました」の看板を目にすると、なぜか心が躍ります。今年もアレを食べに行かなきゃと、私がいそいそと向かうのが銀座の路地にある三州屋 銀座2丁目店。この地で40年間愛され続けてきた老舗の居酒屋。今年話題を集めたプランタン銀座やマロニエゲートのすぐ近くにありながらも、路地をのぞくとそこには古き良き"昭和"が色濃く残っています。入るのにちょっと勇気がいるかもしれません。でも一度行くと病み付きになってしまう魅力たっぷりのお店なのです。



ガラリと扉をあけると、まず目に飛び込んで来るのは壁に所狭しと貼られた手書きのお品書き。「ぶりあら煮」「ヤリイカ一夜干し」「あん肝」など、そそられる一品料理が目白押し。こちらは11時半から夜までの通し営業なので、まだ早い時間からお銚子をかたむけるお父さん方も多くいらっしゃいます。その雰囲気に後押しされてつい「熱燗一本!」と注文したくなってしまうのもこのお店ならでは。


厳選されたブランド牡蛎

この時期、お店のイチオシでもあるカキフライ定食(1100円)は、素材にもかなりこだわり、築地市場でも別格の扱いをされる三陸の広田湾産の牡蛎を使用しています。そんな一級品の牡蛎の中でも店主の岡田さんが仕入れるのは、セリに出る前の特に大振りのものだけ。数十年の付き合いがあるからこそなせる技なのです。「毎年お客さんが楽しみに来てくれるからさ、美味しいものを食べさせてあげたいでしょ」とサラリと言ってくれる店主、御年72歳の岡田さんの人柄もこちらに足を運びたくなってしまう理由の一つなのです。


カキフライは毎日店主自らの手で

素材のこだわりだけではありません。これだけは人に任せられないと岡田さん自らが調理場で腕を振るいます。運ばれてきたお皿には、約8センチほどもあろうかという大振りなカキフライが5個。かぶりつくと、ぷっくりとした身から牡蛎のエキスが口いっぱいに広がり、鼻孔にただよう磯の香り。火を通しても、身はみずみずしくジューシーなのが印象的です。この牡蛎に対抗する衣は、大きめのパン粉を使い、ラードでしっかり揚げた香ばしさがあふれるもの。素材の良さ、衣のつけ具合、揚げ時間、それらの要素が合わさって、この絶妙な味わいを生んでいます。「ここに来てよかった」心からそう思える一皿なのです。

魅力がいっぱいにつまった三州屋さん。人気メニュー、海鮮丼と売り切れご免の定食を次のページで紹介します。