私が高校時代を過ごした西千葉に、甘味処ができたと聞いたのはもう何年も前のこと。ようやく訪れたその店は、魅惑の甘味が揃う、自分だけの隠れ家にしておきたいような場所でした。

(目次)
P1 和菓子職人の「甘味処 楓」の上生菓子と本蕨餅
P2 店内でいただく「房州餅」と「抹茶ぜんざい」

和菓子職人の「甘味処 楓」

楓
メープルシロップ好きのご主人。
楓のように四季を大事にと
店名を「楓」とした。
2002年に開店した「甘味処 楓」が店を構えるのはJR西千葉駅からほど近い場所。周辺は、千葉大学をはじめ多くの学校がある学生街である一方で、住宅街があり落ち着いた雰囲気も有しています。

ご主人の石渡さんは元々全く別の仕事をしていたそうですが、30歳の時に開業を志し製菓専門学校へ入学。そこで知り合った奥様と2人で卒業後まもなく甘味処を開店したということです。

石渡さんが何よりこだわるのは自家製の餡。小豆のこし餡は滑らかでありながら豆の風味は残し、粒餡は皮までふっくら柔らかく、白餡は白いんげん独特の臭みが消えて品良く仕上げられています。

月替わりの「上生菓子」

眠り鶯"
柔らかな肌合いの「眠り鶯」。
抹茶餡を用いた煉切。
(2月の上生菓子)
店に入るとまず目に飛び込むのは、自慢の餡を使った季節の上生菓子が並ぶショーケース。石渡さんが力を注ぐ上生菓子の、品の良い淡い色合いと楚々とした姿に目を奪われます。

雪割草
百合根餡のきんとん「雪割草」。
しっとりと舌になじむ。
(2月の上生菓子)
どの上生菓子を取っても美しさにため息が出て、菓銘(菓子の名)にうっとりとし、口溶けの良さと甘い余韻に魅了されます。餡は単一な味わいではなく、通常のこし餡のほか焙じ茶餡や梅酒餡、百合根の餡に落花生餡など様々で、食べる楽しさも膨らみます。

蕾紅梅
冬の眠りから目覚めるような
煉切「蕾紅梅」(つぼみこうばい)。
(2月の上生菓子)
奥様と2人で作る上生菓子は、女性らしい感性も反映されているのか繊細な表現が印象的です。どの上生菓子も、お持ち帰りはもちろん、店内でお抹茶といただくこともできます。

一度は食べたい「本蕨餅」(ほんわらびもち)

本蕨餅
ふるふるの「本蕨餅」
予約が確実。
同店でぜひ一度は味わって欲しいのが鹿児島産の本蕨粉で作る「本蕨餅」(ほんわらびもち)。自家製のこし餡をとろけるような蕨餅で包み、黒須黄奈粉をまぶしたもので、見た目は地味ながら味わいは逸品です。

作るのに大変な手間暇がかかる本蕨粉は希少価値の高い素材。そのため一般に「わらび餅」という名でも本蕨粉だけで作られたものはごくわずかしかありません。

山里の情景が浮かぶような鄙びた風味に黒い色。どうして形を保っていられるのかと思うほど柔らかく、それでいてしっかりとした弾力がある本蕨餅は、ぷるりとろりと喉の奥へと消えていきます。

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