和菓子/甘味処

なぜ台形なの?亀戸天神「船橋屋」の「くず餅」(3ページ目)

関東育ちの私にとって「くず餅」といえば発酵させた小麦でん粉で作る、歯切れの良い餅のこと。どことなく不思議な食べ物の正体を知るべく、東京・亀戸天神門前の「船橋屋」の工場にお邪魔してきました!

原 亜樹子

執筆者:原 亜樹子

和菓子ガイド

船橋屋のくず餅はなぜ台形?

くず餅
黒蜜もきな粉も
スプーンでたっぷり掬って
残さず食べたい
船橋屋のくず餅の特徴の1つが「台形」であること。この形だと、よりスプーンですくいやすく、より黒蜜ときな粉が絡みやすいのだそう。

「箸では黒蜜ときな粉が逃げてしまいますから」と添えられたスプーンで試食したところ、自家製の濃厚な黒蜜と、香ばしく煎り、粗めに挽いたきな粉がたっぷり絡んだくず餅がするんとスプーンの上へのってきました。

プリッとしたくず餅と、それに絡むたっぷりの黒蜜ときな粉。くどさがなくさっぱりとしていて、暑い日でも美味しくいただけます。

よしの餅
本店の喫茶室で食べられる
「よしの餅」
自家製のこし餡と黒蜜をとろり
喫茶室で出される出来立てのくず餅は、ぬる過ぎず冷た過ぎず絶妙の状態。冷蔵庫で冷し過ぎると固くなるので、お土産にした際はご注意を。

ここでふと、関東のくず餅をひと口食べて「うーん」と微妙な表情をした京都の知人を思い出しました。味噌やヨーグルト、チーズに好き好きがあるように、発酵食品である「くず餅」のわずかな癖が気になるのかなと思ったらそうではありませんでした。彼女の頭にインプットされている「くず=葛」が、「関東版」くず餅の食感を受け入れないのだとか。「音」や「文化」が味覚に与える影響は面白いものです。

乳酸発酵させた小麦でん粉と水、黒蜜ときな粉だけを使った「くず餅」は、美味しくて体にも優しい食べ物。関東以外の地域ではあまり見かけることがありませんが、他の地域にはない文化だからこそ、より大切にしたいと思うのです。

<店データ>
「船橋屋」
亀戸天神前本店所在地:東京都江東区亀戸3-2-14
TEL:03-3681-2784
営業時間:9:00~18:00(喫茶室~17:00)
JR総武線亀戸駅より徒歩約10分
地図:亀戸天神前本店

◇予算:(2015年5月更新)
【喫茶室】
「くず餅」545円
「よしの餅」545円
【持ち帰り】
「くず餅」(カップお1人様用)432円
1-1.5人用720円
2~3人用825円ほか(以上税込)

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