地元に喜ばれる居心地の良さ
近所の年配客のグループが、ちょっとお洒落してワインが醸し出す雰囲気と時間を満喫している席から「遠藤さん、このワインはどう飲んだらいいの?」と尋ねる。オーナーが「自由に飲まれて構わないですよ」などとにこやかに説明するのと相まって、グループの談笑が盛り上がる――。のちほどカウンターでビールを手に(この店ではおいしい生ビールも置いているのだ)遠藤氏は、「実はこの店、長いことお世話になった地元に恩返しという意味もあるんです」と明かす。こうした価格設定だと大きな利益が出ないだろうが、地元住民が手軽な価格できちんとおいしいワインと料理を楽しめる店は貴重である。
行ったことはないが、スペインのバールでは子供や赤ん坊も一緒に近所の人と接するという。近所にあっていつでも利用できるだけでなく、「うちの近くにいい店があるんだ」と他所から訪れた人を連れて来られるような店が押上にあれば、地元の人々は嬉しいに違いない。そして押上から離れた所に住むワイン好きは、気軽な値段と本格的な料理を目指してわざわざ訪れる価値があるというものだ。
ひとり仕込みに励むシェフ |