牛タンと焼き野菜にジューシーな赤
次は主菜から、肉料理を見てみよう。『牛タンと夏野菜のポワレ 赤ワインソース』は、柔かく下ごしらえした牛タンをひとくちサイズに切り揃えた野菜と共に焼き、フォンドヴォーとエシャロットに赤ワインやマデイラ(カラメルソースのような風味があるポルトガルの酒精強化ワイン)を煮詰めて加えたソースをとろりと添えて供する。適確な火の通しによって、それぞれの野菜にほどよく新鮮な香りと歯ごたえが残されている。この料理に合わせたいのは、オーストラリアの赤ワイン。ドミニク・ポルテが造るフォンテーヌ シラーズ カベルネ 2005年である。オーストラリア南東部で冷涼なヤラヴァレー地区のカベルネ・ソーヴィニヨン種に、温暖なピレニーズ地区のシラーズ(フランスでいうシラー)をブレンドし、力強さや深みを加え、小樽で1年間熟成させる。「オーストラリアらしい濃厚な果実味とジューシーな口当たりが牛タンに合うだけでなく、夏にはとてもおいしく飲めます」と林氏が薦めるとおり、なめらかな果実味がある一方で心地良い酸味が味わいを引き締めてくれる。
ここまでご覧になれたように、料理は小ぶりな盛り付けだが適確な火の通しでたっぷりの野菜と相まって、味わい豊かでヘルシーなものだ。たとえ連日通ったとしても、毎日入荷する肉と魚そして野菜と素材が変わるのでメニューには変化がつけられる。「晩ご飯を作るのが面倒だったから……」と食事を摂りに来店する地元客もいるそうだから、すでにコミュニティーの拠りどころとして機能しているとも言える。