料理とワインを純粋に楽しむ
ここでは、ほとんどが一品千円前後というフランス料理が供されている。こうした価格設定で本格的な料理を提供するのは難しいものだが、一皿ずつきちんと焦点が合っており充分味わい深い。料理を担当する長良一(ちょう・りょういち)氏は、日本のホテルなどで働いたのち、フランスとベルギーの星つきレストランで修業した。
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長良一シェフの雰囲気は、どことなく料理と共通している |
「高級なレストランもいいですが、星つきレストランは言わば社交場。もっと料理とワインを純粋に、ウィーンのホイリゲ(新酒の季節にワイナリーに併設される気軽なワイン居酒屋)のように楽しんで欲しいのです」という長シェフ。極端な高級素材ではなく、地元の商店から入荷する肉や野菜など選り抜きの食材に手間ひまをかけることで、フランス料理らしいおいしさを実現している。
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店長の林洋介氏 |
店内には700~800種類はあるというワインのボトルが壁一面のラックと大きな温度管理セラーに納められている。ワインのセレクションとサービスを担当するのは、店長でシニアソムリエの林洋介氏。ワインリストの価格はなんと千円台から3千円が中心で、5千円前後まである。産地やスタイルは幅広く、コストパフォーマンスが高いものを厳選してあるという。ハイスペックなワインを飲みたいという向きにはレアワインのリストが用意されており、1~10万円ほどの価格で数10年前までのオールドヴィンテージや有名ワインが飲める。原則的に標準小売価格に千円プラスした価格なので、一般のワインバーではあり得ないような格安値付けである。
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スペイン産ハモンセラーノを骨付きモモ肉まるごとの塊から薄く削ぎ取る中島氏 |
ボトルだけでなく、フルボトル1本の約2分の1(375cc)・6分の1(120cc)・10分の1(75cc)と、少量ずつ注文できるワインの種類は軽く1ダース以上揃っている。一般のワイン以外にも一杯ずつ注文できる飲物は充実しており、デザートワイン、スピリッツ、生ビール、シードル、シェリー、ワインカクテル各種、ジュース各種などソフトドリンクも多彩だ。料理のメニューは紙一枚にまとめられているので、次は何を注文しようかとメニューを眺めながらワインを飲む楽しみもある。今回は前菜と魚料理そして肉料理をとりあげて、ワインを合わせてみることにしよう。