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映画『それでも恋するバルセロナ』とワイン(2ページ目)

スペインのバルセロナを舞台に、ウディ・アレンが魅惑の恋愛を描いた新作映画『それでも恋するバルセロナ』。この映画でワインが演じる重要な役割とは?

執筆者:橋本 伸彦

ワインが豊富なカタルーニャ

この映画の舞台となるバルセロナは、スペイン北西部カタルーニャ州の州都である。バルセロナ周辺にはワイン地区も多い。例えばカタルーニャ語で「カバ」は「洞窟」や「地下蔵」を意味する。「カバ」と呼ばれるスパークリングワインはシャンパーニュと同様の瓶内二次発酵でじっくり寝かせて造り、そのほとんどがカタルーニャ州で造られている。バルセロナにほど近いペネデス地区ではカバに使うのと同じ白ブドウの地元3品種(マカベオ、チャレロ、パレリャーダ)を使ったスティル(非発泡性)の白ワインが多く造られている。バルセロナで飲むなら、こうした白ワインもいい。

カタルーニャ州には他にも、個性豊かな地域がひしめいている。濃厚な赤ではモンサンやテラ・アルタ、お値打ワインが多いコステルス・デル・セグレ、フレッシュな白ワインで知られるアレーリャやアンプルダン・コスタ・ブラバなどがある。なかでもプリオラートという地域はこの近辺でスター的な存在で、粘板岩の多い急斜面でよく熟した、ガルナチャ(=グルナシュ)、カリニェナ(=カリニャン)、カベルネ・ソーヴィニヨンといったブドウ品種から凝縮感の高い赤ワインが造られる。国際的な評価も高く価格帯がぐっと高めである。

中央がフアンとクリスティーナ。アーティスト仲間との語らいにもワインは欠かせないcopyright 2008 Gravier Productions, Inc. and MediaProduccion, S.L.

ちなみにこの映画で画家がふたりの女性を連れ出すオビエドという町は、バルセロナから西へ600キロメートル以上離れたスペインの北側にあって、9世紀の建物が世界遺産に指定されていることで知られている。地元でワインはほとんど造られていないはずだが、古風な建物が醸し出す魅力的な雰囲気でワインを飲む場面が登場する。バルセロナでも食事のたびにワインが登場するが、あくまで焦点は肝心の恋の行方である。

本作で画家が女性に飲ませるワインはもっぱら赤だったが、プリオラートのように濃厚なワインではなくて、きっとふくよかでいくらでも飲めてしまうようなワインだったに違いない。ではこの映画から、ワインガイドが読者にお伝え出来るヒントは?……「バカンス先ではイイ男とワインの飲み過ぎに注意!」それとも「この映画からスペインワインの飲み方と飲ませ方を盗め!」だろうか。

※記事中の画像は映画配給会社などの版権者に許諾を得て掲載しており、転載を禁じます
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