バイザグラスとは? ワインのグラス売りが重要に
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では英語圏のレストランにグラス売りのワインはないのか? そんなことはない。日本よりグラス売りがさかんな国も多い。そこではこの種のワインを「ワイン・バイ・ザ・グラス」(グラス単位で注文できるワイン)と言い表すことが多い。英語圏のレストランで簡単に済ませたければ、「ワインバイザグラス?」と尻上がりのイントネーションで訊けば分かってもらえるはずだ。
日本でも一般的になってきたワインのグラス売りがこれからますます重要になってくるはずなのは、次のような理由からだ……
グラスワインからバイザグラスに
かつて「グラスワイン」といえばその店のワインリストの中でも安くてそれなりにおいしい定番アイテムの「ハウスワイン」を注いでくれて、栓を開けて時間が経っているせいかちょっと気が抜けたような味わいで……というケースが多かった。だが、今はどうだろう? 少人数での食事が増え、食事にかける予算を抑え、さらに美味しいワインを、少しずつ多くの種類で楽しみたい。そんな客が増えたことに、すぐれた飲食店はきめ細かく対応している。
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例えば渋谷のあるワインバーでは、あらゆる地域の幅広いワインが数多くグラスで楽しめ、さらにコース料理の一皿ずつにいろいろなワインを一杯ずつ合わせてくれるセットが食事と共に数千円で楽しめる。ここではバイザグラスで頼むワインの状態とセレクションがいいので、ワインは全部「お任せ」にしても安心して頼める。
こうしたワインの提供スタイルなら、ワイン好きはきちんとした食事に合わせて上質なワインを数多く飲み比べることが出来て、値打ち感がある。不況でも客が「また行きたいね」といって通うような店には、「あの店に行くと得をする」という付加価値が必要だ。ワイン好きにとってバイザグラスのワインは、通いたくなる魅力となり得るのである。
カリフォルニアワインをバイザグラスで
「バイザグラス」という言葉を1995年からキャンペーンで使用してその普及に貢献しているのが、カリフォルニアワインの生産者による組織、ワインインスティチュートである。今までの「グラスワイン」に対して、アメリカの繁盛店でさかんに提供されているような、品質が高くフレッシュなワインを手軽な量と価格でというイメージの象徴として「バイザグラス」を用いたのは慧眼である。カリフォルニアのワインには全般的に熟した果実味が豊富でコクのあるものが多いので、グラス売りで提供する際に開栓してからの日持ちもいいだろう。客にとってありがたいことに、味わいにふくよかな果実味が豊富であれば、果実味が乏しいワインよりも幅広い料理や食材に合わせることができて食事との相性がいい。またボトルで売るよりもバイザグラスの方が利益率を高く設定できるから、店にとってもメリットがある。
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『カリフォルニア バイザグラス プロモーション』と題された15回目のキャンペーンは、ユニークな競争が行われる。3月までにプロモーションに応募した飲食店は4・5月に連続3週間以上・5種類以上のカリフォルニアワインをグラス売りする。期間中に審査員が客を装って訪問し、一般客と同じように食事をして、その店のサービスや価格・品揃えを評価するというものだ。評価で上位に入ると受賞者はカリフォルニアワイン研修旅行に行ける。
ワインの売上金額で競うやり方だと業態や規模によって有利な店が出るが、この方法だと均等にチャンスがあるから、参加店は皆で競って安くて旨いバイザグラスのワインをより丁寧なサービスで提供することだろう。またワインインスティチュートはバイザグラスでワインを提供する際のコツを参加店に伝授し、事前にカリフォルニアワインの大規模な試飲会を開いて、ワイン選びもサポートしている。
さあ、春から初夏にかけての爽やかなこれからの季節に、バイザグラスのワインが豊富な店に食事に出かけよう。事前にインターネットでチェックしておけば、どんなワインを飲むかあらかじめ見当がつく。
「グラスワイン」よ、さらば。これからはバイザグラスでいこう。