ワイン/特別な日の高級ワイン

デュジャックとヴィレーヌ:大物の共演(4ページ目)

ブルゴーニュの生産者から2軒が来日セミナーを行い、それぞれトップクラスのワインは最新ヴィンテージについて、さらに両者の共同プロジェクトについて語った。

執筆者:橋本 伸彦

プロヴァンスなのに涼しい


共同プロジェクトには意欲的に取り組む
1989年に南仏プロヴァンス地方に設立されたトリエンヌ。醸造家のレミ・ルジエ氏が常駐するが、現在はジェレミー・セイス氏が中心となって運営に当たってる。ワインを知っている人なら「暑くてなかなか上級ワインができないプロヴァンスになぜ進出するの?」と思うかもしれない。だが、マルセイユの北東30km、サント・ボーム山塊を越えた標高450mというこの場所は粘土石灰質の土壌で、夏に日中の気温が30~40℃まで上がるが、夜間は10~15℃と寒い。香りの良いワインになるブドウ栽培に欠かせない、乾いた気候と昼夜の温度差があるのだ。

もともと植わっていた品種、ユニ・ブラン、サンソー、カリニャンそしてこの地方によくあるグルナッシュやムールヴェードルは、この畑に適していないことが判った。そこで白ワイン用にはヴィオニエとシャルドネ、赤用はカベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、シラーを選び、接木して低収量(35hl/ha前後)で栽培している。ブドウについた野生酵母で1ヵ月間以上の長期発酵後、赤の上級キュヴェはデュジャックで使った樽で1年間熟成させる。ワインの区分はヴァン・ド・ペイ・デュ・ヴァールだ。

ヴィオニエで造った白、2007年『サント・フルール』は好印象である。とろりと熟しているが花のような爽やかな香りと酸味が充分あり、純粋な果実味が充分な余韻へとつながる。最後に試飲したトップキュヴェの赤ワイン、2005年『サン・オーギュスト』も今からおいしく飲める。この年はシラーが45~50%、カベルネ40%、残りがメルロといった独特のブレンドで、その年の作柄によってブレンド比率は変える。赤身肉や黒胡椒のような風味があり、しっかりした飲み口だがエレガントでバランスよく仕上がっている。ブルゴーニュにないブドウ品種を使って、ブルゴーニュの個性で造るワインの可能性を感じる。

2つの生産者が造る3つのワイン。まったく違った個性がありながら、どれも共通する洗練性が感じられる。特にトリエンヌは南のワインとあなどれない出来である。ブルゴーニュの生産者は、我々がなんとなく昔のままというイメージを持っている間に、着々と進化を遂げているのだ。

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