最上級の赤をチョコレートのデザートと
ニュートンの最上級ワイン『ザ・パズル』の2002年ヴィンテージ。ブドウ品種はカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローを主体にプティ・ヴェルドー少々といわゆるボルドー品種ブレンドの赤ワインである。スプリング・マウンテン地区の中で112箇所に及ぶ小さな区画のブドウを、それぞれ理想的な熟度で収穫する。手で摘み取りと選別を行い、それぞれの場所ごとに別々のタンクで醸造する。それらのワインをまさに「パズル」のように組み合わせて最終的にベストなブレンドを構成する。ここで思い出されるのは、醸造家のスティーヴン・キャリアーがシャンパーニュの出身であることだ。かつてドン・ペリニヨン師が異なる畑そしてヴィンテージのワインを組み合わせて完成度を高める「アッサンブラージュ」(ブレンド)によってシャンパーニュの安定性とバランスを編み出した。同様に『パズル』は同じヴィンテージの中でも毎年異なるブドウの組み合によって、単一畑のワインには不可能なレベルの品質を得るのだ。
辛口の赤ワインをチョコレートに組み合わせるのは、失敗することが多いものだ。しかし、パズルに見られる味の要素を当てはめたデザートは、なかなか成功していた。切るととろりとチョコレートが流れ出るプディングにブラックチェリーを添え、ヘーゼルナッツのジェラートにはバニラの鞘がトッピングされている。ワインがしなやかにデザートを包み込む、そんな感じである。
パズルを筆頭に高い評価をえたニュートン・ヴィンヤード社は、出資を受けてLVMHグループの傘下となった。だが、ニュートン氏は全て売却したわけではなく現在も一部を出資し、発言権を確保しているのだという。ワインも見事なら、戦略もパーフェクトを目指す。これはもうアメリカにおける、ひとつのサクセスストーリーである。