ワイン/特別な日の高級ワイン

ニュートンのワインに、この料理を。(4ページ目)

もとモデルにして医師。アメリカンドリームを体現するようなスー・ホア・ニュートン氏。ワインは自然派のさきがけである。ミステリアスな味わいの理由をご本人に訊いてみた。

執筆者:橋本 伸彦


最上級の赤をチョコレートのデザートと

ニュートンの最上級ワイン『ザ・パズル』の2002年ヴィンテージ。ブドウ品種はカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローを主体にプティ・ヴェルドー少々といわゆるボルドー品種ブレンドの赤ワインである。スプリング・マウンテン地区の中で112箇所に及ぶ小さな区画のブドウを、それぞれ理想的な熟度で収穫する。手で摘み取りと選別を行い、それぞれの場所ごとに別々のタンクで醸造する。それらのワインをまさに「パズル」のように組み合わせて最終的にベストなブレンドを構成する。

ここで思い出されるのは、醸造家のスティーヴン・キャリアーがシャンパーニュの出身であることだ。かつてドン・ペリニヨン師が異なる畑そしてヴィンテージのワインを組み合わせて完成度を高める「アッサンブラージュ」(ブレンド)によってシャンパーニュの安定性とバランスを編み出した。同様に『パズル』は同じヴィンテージの中でも毎年異なるブドウの組み合によって、単一畑のワインには不可能なレベルの品質を得るのだ。

しっとりとしたスポンジ生地とその中心部にチョコがたっぷりと入っている

辛口の赤ワインをチョコレートに組み合わせるのは、失敗することが多いものだ。しかし、パズルに見られる味の要素を当てはめたデザートは、なかなか成功していた。切るととろりとチョコレートが流れ出るプディングにブラックチェリーを添え、ヘーゼルナッツのジェラートにはバニラの鞘がトッピングされている。ワインがしなやかにデザートを包み込む、そんな感じである。

パズルを筆頭に高い評価をえたニュートン・ヴィンヤード社は、出資を受けてLVMHグループの傘下となった。だが、ニュートン氏は全て売却したわけではなく現在も一部を出資し、発言権を確保しているのだという。ワインも見事なら、戦略もパーフェクトを目指す。これはもうアメリカにおける、ひとつのサクセスストーリーである。
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