メルローも「さらりと濃い」
同じく無濾過、『アンフィルタード・メルロー』2002年に合わせたのは、ゆっくりと火を通した鴨の腿肉で、この皿に添えられているのはフェンネル(ウイキョウ)とトマト、黒オリーヴ油、チャイブ(香草の一種)入りニョッキを焼いたもの。カリフォルニアの赤ワインにありがちな、ガツンとインパクトがあるものでも、トロリと締りのないものでもなく、これは先のシャルドネと同じエレガントさ。黒オリーヴやトマトのようなメルローの力強い要素があるのに、さらりとスタイリッシュだ。こうした赤ワインに料理を合わせる時に、オリーブを刻んだりトマトを少し加えてみたりするのは簡単で効果があるものだ。ニュートンでは赤ワイン用に、ナパの中に位置するスプリング・マウンテンという地域のブドウを使う。シャルドネのカーネロスが海からほんの数キロなのに対して、スプリング・マウンテンはぐっと内陸部。セント・ヘレナという小さな町の西側、おおよそ東に面した斜面に畑が散在しており、そこにはニュートンのワイナリーも位置している。
一般に大規模生産のワインは純粋培養された酵母で発酵させ、清澄(沈みにくい固形物を沈殿させる)そして濾過(さらに細かい固形物を漉し取る)というプロセスを経て安定化される。だが、やり方によっては美味しさの要素も抜き去ってしまう危険性がある。アンフィルタード・メルローはブドウについた野生酵母で発酵させ、清澄も濾過もしない。あくまでシンプルで古典的な手法で勝負しているのである。