エウジェニオを想って
インタビューのなかで、チンツィアにエウジェニオはどんなワインを造ろうとしていたのかと訊いた瞬間、緊張したその表情が初めてふわりと解け、彼女はやわらかな表情でほほ笑んだ。エウジェニオについて思い出し、それを言葉にしようとする時、彼女はとても言葉に表し尽くせない喜びを、心の中に無限に満たしているような表情になる。「エウジェニオがどんなだったかって?…そうね、何を話そうかしら?私たちは結婚して畑のすぐ隣に住んだけれど、日に何度も畑の前を通るでしょう?彼はね、畑を通る度に、毎回何か気付くのよ。それくらい、畑に熱心だったの」
「ああ、ここを直さないと。とか、少し葉の具合が良くないかな?なんてほんとうに細かいところ。私が、一体どうしてそんなに些細なところに気が付くの?って訊くと、いや、気がついてしまうんだよ、って…」