キャンティとメディチ家

グラスに少し入った赤ワイン
気になるワインの生産者は…
メディチ家といえば、世界史を勉強した人ではなくとも聞いたことはあるだろう。ミケランジェロやダヴィンチを支援した、イタリアの名家である。

次に、キャンティ。イタリアワインといえば、誰でも知っている銘柄である。ある試飲会で旨いキャンティがあった。そのキャンティは、メディチ家の流れを汲むファミリーが、古い修道院をワイナリーとして再興させて有機栽培で造っていた。しかもそのひとりは、キャンティ・クラシコ協会で初の女性会長を務めたという… 

その女性、バディア・ア・コルティブオーノ社のエマニュエラ・ストゥッキ・プリネッティ氏に会うことができた。ワインについて話を聞くインタビューの、シリーズ第1回はこの人に決定である。

エマニュエラ登場

会って握手しながら「ごめんなさい、途中で子供に電話をしていいかしら?」そう、時差を超えたイタリアでは子供が寝る時間。仕事で出張に出ていても、おやすみを言う電話は欠かさない2児の母である。

褐色の長い髪の女性、エマニュエラ・ストゥッキ・プリネッティ氏
子供について語る時には、ひときわ柔らかな表情

会った印象では、この人が家族経営のワイン会社の社長でマーケティングとPRを担当し、2000年から2003年まで600の生産者を束ねるキャンティ・クラシコ協会の会長をしたビジネスウーマンとは思えないだろう。シンプルで上質なアイテムを身に着けていて、装いも雰囲気もエレガントそのものだ。

彼女の母はメディチ家の末裔、ロレンツァ・ディ・メディチ。トスカーナ料理の研究家として知られる。父方のストゥッキ・プリネッティ家の祖先にあたる銀行家は、11世紀に開かれた修道院からナポレオン統治で修道僧が追われ荒廃していたのを、1846年にブドウ畑ごと買いワイナリーとして再開した。

「豊かな収穫の修道院」

古い石造りの塔がある修道院
外見は遺跡だが中はモダン
イタリア半島という長靴で言えば、膝の下あたりにあるトスカーナ州。シエナとフィレンツェの間、南北に広がるのがキャンティというエリアだ。その中心部、なだらかな丘が続く部分が、昔からの優れた畑が集中するキャンティ・クラシコ地区である。

ここにエマニュエラのファミリーが所有する土地は800ヘクタール。大半は森で、約1割の70ヘクタールがブドウ畑。海抜300m前後の涼しげな畑は、1980年代から徐々に改善され2000年に完全な有機栽培に移行、2003年に有機認証を取った。修道院の建物の外観はそのままに、内部を改修してレストランやホテルなど観光施設として経営し、彼女の3人の兄弟がそれぞれレストラン・観光・醸造と米国市場という具合に役割分担している。

ワイナリーのロゴである紋章の「杖」はベネディクト派の修道僧がブドウの苗を植える際に杖で穴をあけたことに由来する。キャンティで最初にブドウ栽培をしたこの地は、ラテン語で「豊かな収穫の修道院」と名付けられ、それをイタリア語でバディア・ア・コルティブオーノと呼ぶ。


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