陸羽が示した茶の効能
凝悶、腦疼、目澀、四肢煩、百節不舒
このような飲み方については、「ドブに茶を捨てるようなものだ」と『茶経』の中で陸羽は攻撃していますが、その陸羽自体も、茶にはかなりの効能があることをその『茶経』の中で示しています。
まず、一之源で、「茶之為用、味至寒、為飲最宜、精行儉徳之人。若熱渇、凝悶、腦疼、目澀、四肢煩、百節不舒、聊四五啜、与醍醐、甘露抗衡也。(茶ノ用タル味至ッテ寒ナリ。飲ヲナスコト精行倹徳ノ人ニ最モヨロシ。モシ熱渇凝悶脳疼ニ目渋リ四肢煩ヒ百節舒ヒザルトキ四五啜スレバ醍醐甘露ト抗衝ス)」と述べています。
つまり、味が寒だから、行いがすぐれ、つつましい徳のある人にもっともふさわしい飲みものだとした上で、もし熱があって渇き、気が鬱し、頭痛がし、目がしばたき、手足がいたみ、節々がのびやかでないときに、この四、五杯ものめば、醍醐味や甘露の水と良い勝負の味がする、というのです。
このように陸羽は、茶には頭や身体をはっきりとさせる覚醒効果があることをはっきり示しています。まさに、茶に含まれるカフェインの効能を言い当てているわけです。
また、六之飲で、「至若救?、飲之以漿、[益蜀]忿、飲之以酒、蕩昏寐、飲之以茶。(咽の渇きには水、憂いと怒りを除くのは酒、そして眠気を払うのが茶)」と書いています。
『広雅』に書かれたのと同じように、陸羽は眠気を覚ますことを明確にしています。
もっとも、陸羽は、様々なものを入れない、いわゆる「清茶(せいいん)」にこだわり、そして茶の味にこだわった人でした。酒と同じく、茶を媒介してともと語り合えることや、さらに茶道を示し芸術的な茶のあり方を考案した人ですから、効能は、茶の一側面だったのでしょう。
しかし、陸羽も触れざるを得なかった茶の効能はやはりあるわけです。同じ時代に、陸羽の茶や茶の効能を述べる人たちも多くいました。